この記事は2026年10月10日に、労働基準法・育児介護休業法・厚生年金保険法(e-Gov)、協会けんぽ「出産手当金」、厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」(2026年8月1日改訂版)、出入国在留管理庁「みなし再入国許可」を本文まで開いて確かめました。給付の上限額は2027年7月31日までの額です。
先に結論
- 産休・育休とは、出産の前後と子が1歳になるまで、会社に籍を置いたまま休める法律上の権利で、外国人も国籍に関係なく同じです。産前6週・産後8週(労基法)、育休は1歳まで(保育所に入れなければ最長2歳)。
- 休んでいる間の収入は、給料ではなく給付金です。産休中は出産手当金(給料の3分の2・会社の健康保険の人だけ)、育休中は育児休業給付金(180日まで67%、その後50%)。
- 2025年4月から、両親とも14日以上休むと最初の28日は80%(手取り10割相当)になりました。給付は非課税で、社会保険料も免除されます。
- 条件は「雇用保険に入って12か月」と「有期契約なら子が1歳6か月まで契約が続く見込み」。留学生のバイトは対象外。
- 帰国して会社を辞めると、その日で給付は終わります。休んだまま帰るのと、辞めて帰るのは別です。
これが分かると、妊娠が分かった日に「何か月休めて、口座にいくら入るか」を数字で言えます。会社に相談するときも、「制度はこうなっているはず」と言える側になります。

妊娠が分かった。会社に言うのが怖い。「外国人だから育休は無理」と言われるかもしれない。言われても、それは法律のほうが正しい。日本人の同僚に聞いても「みんな取ってるよ」で、いくら出るかまでは知りません。ここでは、休める期間、その間に口座に入るお金、条件、そして外国人にだけ起きる「帰国」の問題を、法律と厚労省のパンフレットの数字だけで書きます。
産休・育休とは?——外国人も同じ、法律上の権利です

産前産後休業(産休)とは、出産する本人が産前6週間(多胎は14週間)・産後8週間、会社を休める労働基準法上の権利です(第65条)。産前は本人が請求すれば会社は働かせてはならず、産後8週間は本人が望んでも働かせてはなりません(6週間過ぎて本人が請求し、医師が認めた仕事は可)。
育児休業(育休)とは、1歳未満の子を育てる労働者が、会社に申し出て取れる休業です(育児・介護休業法第5条)。母親も父親も取れます。保育所に入れないなどの事情があれば1歳6か月まで、さらに2歳まで延長できます。
どちらの条文にも国籍の要件はありません。「外国人だから」「うちの会社は前例がない」は、断る理由になりません。
休み方の早見表——いつから、どれだけ、何が出るか
| 名前 | 期間 | だれが | お金 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 産前休業 | 出産予定日の6週間前(多胎14週間)から | 出産する本人が請求したとき | 出産手当金(給料のおよそ3分の2) | 労基法65条 |
| 産後休業 | 出産の翌日から8週間(6週間後に本人が請求し、医師が認めた仕事は可) | 出産した本人(本人が望んでも働かせてはならない) | 出産手当金(同上) | 労基法65条 |
| 産後パパ育休(出生時育児休業) | 子の出生後8週間以内に、合計28日まで(2回に分割可) | 主に父親 | 出生時育児休業給付金67%(条件を満たせば13%上乗せで80%) | 育介法9条の2 |
| 育児休業 | 子が1歳まで(2回に分割可)。保育所に入れない等で1歳6か月、さらに2歳まで | 母も父も | 育児休業給付金67%(180日まで)、181日目から50% | 育介法5条 |
| 休業中の保険料 | 休業の期間 | 会社が申し出たとき | 健康保険料・厚生年金保険料が免除 | 厚年法81条の2・81条の2の2 |
| 解雇・不利益な扱い | 産休中とその後30日は解雇できない。育休の申出や取得を理由にした解雇などの不利益な扱いは禁止 | 全員 | —— | 労基法19条・育介法10条 |
両親がそろって育休を取る「パパ・ママ育休プラス」を使うと、給付金の対象になる期間は子が1歳2か月になる日の前までのびます(厚労省パンフレット)。
休んでいる間、いくら入りますか?——産休は3分の2、育休は67%→50%
産休のあいだも、会社からいつもの給料が振り込まれるはず。あなたの国では、それが当たり前かもしれません。日本では、そこが違います。給料の代わりに入るのは給付金で、額はふだんの給料より少なくなります。
休んでいる間、会社は給料を払う義務がありません。代わりに、2つの給付金が口座に入ります。
- 出産手当金(産休中)——会社の健康保険(協会けんぽ・健保組合)に入っている本人が対象。出産日以前42日(多胎98日)から出産の翌日以後56日までのうち、休んで給料が出なかった日について、1日あたり「直近12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2」。月給25万円なら1日およそ5,600円、産休全体(98日)でおよそ54万円です。国民健康保険にはこの給付はありません。
- 育児休業給付金(育休中)——雇用保険の被保険者が対象。休業開始時の賃金日額×休んだ日数×67%(通算180日まで)、181日目からは50%(厚労省パンフレット2026年8月改訂版)。賃金日額には上限があり(16,540円・2027年7月31日まで)、30日で最大332,454円(67%)・248,100円(50%)。
そして2025年4月からの上乗せ。子の出生後8週間(母は産後休業後8週間)以内に、本人が14日以上の育休を取り、配偶者も14日以上の育休を取ると、最初の28日分に「出生後休業支援給付金」13%が乗って合計80%になります。配偶者が働いていない・自営業・産後休業中・ひとり親の場合は、配偶者の育休は要りません。

月給別の目安
月給が毎月同じで、ボーナスや残業の変動がない場合の目安です。税金・保険料を引く前の額で、育児休業給付金は30日(80%だけ28日)あたり、出産手当金は産休98日(産前42日+産後56日)の合計です。
| 月給 | 出産手当金(98日の合計) | 育休 67%(30日) | 育休 50%(30日) | 80%(最初の28日) |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 約43.6万円 | 134,000円 | 100,000円 | 約149,300円 |
| 25万円 | 約54.4万円 | 167,500円 | 125,000円 | 約186,700円 |
| 30万円 | 約65.3万円 | 201,000円 | 150,000円 | 224,000円 |
| 40万円 | 約87.1万円 | 268,000円 | 200,000円 | 約298,700円 |
| 50万円以上 | 月給÷30×2/3×98日 | 上限332,454円 | 上限248,100円 | 上限370,496円 |
育児休業給付金の元になる「休業開始時賃金日額」は、休業前の直近6か月の賃金総額(臨時に払われる賃金と3か月を超える期間ごとの賃金は除く)を180で割った額です。月給が一定なら月給÷30で、16,540円(月給でおよそ49.6万円)が上限です。出産手当金は賃金日額ではなく、直近12か月の標準報酬月額(月給を等級に当てはめた額)の平均を使うので、表と数千円ずれることがあります。この表の額は、公式の式に月給をそのまま入れた計算で、実際の支給額は会社の健康保険と申請書で決まります。
育休中に会社から賃金が出ると給付は減り、賃金が「賃金日額×日数」の80%以上になると給付は出ません。1か月(支給単位期間)に働いてよいのは10日以下(10日を超えるなら80時間以下)です(厚労省パンフレット)。
給付金は非課税で、しかも休んでいる間の健康保険料と厚生年金保険料は免除されます(厚生年金保険法第81条の2・第81条の2の2、会社が申し出ます)。だから80%の給付は「手取り10割相当」と厚労省は書いています。67%でも、税金と保険料が引かれない分、手取りの8割前後です。
父親も取れますか?——取れます。産後パパ育休は28日まで
父親は、子の出生後8週間以内に、合計28日まで「産後パパ育休(出生時育児休業)」を取れます(2回に分けて可)。給付は出生時育児休業給付金67%、母親が産後休業中なら配偶者要件は満たすので、13%が乗って80%です。そのあと通常の育休(1歳まで)にもつなげられます。

これは「配偶者が日本で働く外国人」の家族にも同じです。日本で出産したときの在留資格と一時金50万円、生まれたあとに毎月入る児童手当(15日以内に申請)と合わせて読んでください。
条件は?——雇用保険に12か月、有期契約なら「1歳6か月まで続く見込み」

- 雇用保険の被保険者であること——週20時間以上・31日以上の雇用。留学生のバイトは雇用保険に入っていないので、育児休業給付金は出ません(産休そのものは労基法なので取れます)。
- 休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または80時間以上)ある月が12か月以上——日本で働き始めて1年未満だと、ここで引っかかります。
- 有期契約(契約社員・派遣)なら、子が1歳6か月に達する日までに契約が終わることが明らかでないこと(育児・介護休業法第5条ただし書き)。更新の見込みがあれば取れます。「有期だから無理」ではありません。
育休には、給付金とは別にもう一つ関所があります。会社と労働者の代表が書面の労使協定で「雇用された期間が1年に満たない人は育休の対象外」と決めていると、会社は育休の申出を断れます(育児・介護休業法第6条)。協定があるかどうかは、就業規則か人事に聞いて確かめてください。産前産後休業(労基法)と出産手当金には、この例外はありません。申出は、休み始めたい日の1か月前までにします。それより遅いと、会社は開始日を申出の翌日から1か月後の日までのあいだでずらせます。
出産手当金のほうは、会社の健康保険の被保険者であることだけが条件です(厚生年金と一緒に入っている人)。
帰国したらどうなりますか?——籍を置いたまま帰るのと、辞めて帰るのは別です
ここが外国人にだけある問題です。育休中に母国に帰って親に手伝ってもらいたい、という人は多い。
- 会社に籍を置いたまま一時帰国する——育休は続いていて、給付の要件(被保険者であること・休業中の就業日数)を満たしている限り、給付は続きます。1年以内に戻るならみなし再入国で出ます。在留期限が出国から1年より前に来るなら、その期限までに戻ります。有効な旅券と在留カードを持ち、出国のときにみなし再入国での出国を希望すると伝えます。在留期間が3月以下の人と短期滞在の人は、みなし再入国の対象外です。
- 会社を辞めて帰国する——退職した日に雇用保険の被保険者でなくなり、育児休業給付金はそこで終わります。出産手当金は、退職日の前日までに会社の健康保険に継続して1年以上入っていて、産休に入って(または休職のまま)退職した場合は、退職後も続きます。退職日に出勤すると受けられません(協会けんぽ)。「帰国するなら辞めてから」は、育児休業給付金の面では損です。

帰国のしかた別の早見表
| 見るところ | 籍を置いたまま一時帰国 | 辞めて帰国 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金 | 休業は続く。被保険者で、休業中の就業日数などの要件を満たす限り続く | 退職日まで。そこで終わる |
| 出産手当金 | 産休中は続く | 退職日の前日までに会社の健康保険に継続して1年以上、かつ産休に入って(または休職のまま)退職したときだけ続く。退職日に出勤すると受けられない |
| 出国のしかた | 出国から1年以内(在留期限が先に来ればその日まで)に戻るなら、みなし再入国。在留期間が3月以下・短期滞在は対象外 | 戻らないなら該当なし |
| 在留の手続 | 退職の届出は要らない。在留期限が休業中に来るなら更新は休業中でも出せる(在職証明を会社に頼む) | 退職のときの所属機関の届出が要る |
在留資格の面では、会社に籍があるまま休業しているので、退職のときの所属機関の届出は要りません。在留期限が育休中に来るなら、更新は休業中でも出せます(在職証明を会社に頼む)。
断られたら、辞めろと言われたら?——法律が止めています
- 産前産後休業の間とその後30日間は、会社は原則として解雇できません(労働基準法第19条)。
- 育休の申出をしたこと、育休を取ったことを理由に、解雇その他の不利益な扱いをすることは禁じられています(育児・介護休業法第10条)。
- 断られる合法的な例外は、先に書いた「雇用1年未満+労使協定」のほうです。「外国人だから」「会社に前例がない」は、これに入りません。
終わりの判断——妊娠が分かったら、この順で
- 自分が「会社の健康保険+雇用保険」に入っているか、給与明細で確かめる。両方引かれていれば、出産手当金と育児休業給付金の両方が対象。
- 会社に伝える。産休の請求と育休の申出は本人がします。育休は始めたい日の1か月前までに。雇用1年未満の人は、労使協定の有無も聞いておく。「前例がない」と言われたら、労基法第65条と育児・介護休業法第5条を見せてください。
- 配偶者も14日以上休めるか話す。2人で休めば最初の28日が80%になります。
- 帰国するなら、辞めずに一時帰国。辞めた日に給付は止まります。
よくある質問(FAQ)
Q. 外国人でも産休・育休は取れますか?
取れます。労働基準法(産前6週・産後8週)と育児・介護休業法(1歳まで)に国籍の要件はありません。
Q. 育休中はいくらもらえますか?
育児休業給付金が、休業開始時の賃金日額の67%(180日まで)、その後50%。両親とも14日以上休めば最初の28日は80%。非課税で社会保険料も免除です。
Q. 産休中の収入は?
会社の健康保険に入っている本人には、出産手当金として給料のおよそ3分の2(産前42日+産後56日の範囲)。国民健康保険にはありません。
Q. 契約社員でも育休は取れますか?
子が1歳6か月になるまでに契約が終わることが明らかでなければ取れます。更新の見込みがあれば対象です。
Q. 育休中に帰国したら給付はどうなりますか?
会社に籍を置いたまま一時帰国するなら続きます。辞めて帰国すると、退職した日で終わります。
Q. 雇用されて1年たっていなくても育休は取れますか?
会社に「雇用1年未満は対象外」とする労使協定がなければ、取れます。協定があると会社は断れます。ただし給付金には別に、雇用保険に入っていた月が12か月以上という条件があります。
Q. 育休を理由に解雇されることはありますか?
育休の申出や取得を理由にした解雇は禁じられています(育児・介護休業法第10条)。産前産後休業の間とその後30日間は、原則として解雇できません(労働基準法第19条)。
Q. 父親も育休を取れますか?
取れます。出生後8週間以内に28日までの産後パパ育休(67%+13%で80%)、そのあと1歳までの育休も。
まとめ
産休・育休は外国人も同じ権利。産前6週・産後8週、育休は1歳まで(最長2歳)。お金は産休中が出産手当金(3分の2・会社の健保のみ)、育休中が育児休業給付金(67%→50%、両親で休めば最初の28日は80%)。非課税・社会保険料免除。
条件は雇用保険12か月と、有期なら1歳6か月まで続く見込み。帰国するなら辞めずに一時帰国——辞めた日に給付は止まる。妊娠が分かったら、給与明細を見て、会社に伝える。それが最初の一歩です。同じ週に、市区町村への妊娠届で母子健康手帳と妊婦健診の受診票も受け取ってください。
出典(公式):労働基準法 第65条(e-Gov)/育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第5条(e-Gov)/全国健康保険協会「出産手当金」/厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」(2026年8月1日改訂版)/厚生年金保険法 第81条の2・第81条の2の2(e-Gov)/出入国在留管理庁「みなし再入国許可」(いずれも2026年10月9日に確認)
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