最終更新:2026年8月31日
この記事の結論(Summary)
- 「国民健康保険料の軽減」とは、前年の所得が低い世帯の「均等割」が7割・5割・2割引きになる制度です。国籍の条件はありません。
- 東京23区の均等割は年65,200円(40歳未満)。7割軽減なら19,560円まで下がります。差は年45,640円です。
- 来日して最初の年は、前年の日本での所得がゼロです。だからほとんどの留学生が7割軽減の対象になります。
- ところが、所得が役所に「判明していない」と軽減は来ません。収入がゼロでも、所得の申告が要ります。
- ひとり暮らしで給与だけなら、年収108万円以下で7割、139万円以下で5割、165万円以下で2割です。
- 直せるのは2年前まで。それより古い分は、正しくても戻ってきません。
保険証は届いたのに、そのあと来た納付書の金額を見て手が止まった。アルバイトはほとんどしていないのに、なぜこの額なのか。国民健康保険料の通知は、来日した年の秋にいちばん多く届きます。
この記事は、その金額が正しいのかどうかを自分で確かめて、必要なら下げるための手順です。
国民健康保険料の軽減とは?——均等割が7割・5割・2割引きになる制度
国民健康保険料は、2つの部分でできています。
- 所得割……前年の所得に比例する部分。所得がゼロならゼロになります
- 均等割……加入している人数で決まる部分。所得がゼロでもかかります
問題は下です。所得がまったくなくても、均等割は満額で請求されます。東京23区なら、40歳未満のひとりぶんで年65,200円(医療分47,600円+後期高齢者支援金分17,600円。令和8年4月1日現在)。月に直すと5,433円です。
この均等割を7割・5割・2割減らすのが軽減制度です。厚生労働省が法令にもとづく制度として説明しているとおり、全国どこの市区町村にもあります。国籍も在留資格も条件になりません。

所得がゼロでも、申告しないと軽減は来ません
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。軽減は自動で付くように見えて、条件があります。
所得が判明していれば、自動的に軽減されます。(中略)世帯主及び国保加入者全員の所得が確定しないと軽減の対象にはなりませんので、所得の有無にかかわらず、(中略)お住まいの自治体の課税担当課または税務署に所得の申告をしてください。
板橋区「国民健康保険料の軽減・減免」
「所得の有無にかかわらず」と書いてあります。収入がなかった人も申告してください、という意味です。
日本人なら、勤め先が給与支払報告書を役所に出すので、放っておいても所得が分かります。学生でアルバイトをしていない人や、来日したばかりで前年の収入が日本に一円もない人は、そのしくみに乗りません。役所から見ると所得は「ゼロ」ではなく「不明」です。不明のままだと、軽減の判定ができないので満額になります。
年度の途中で引っ越してきた場合も、前の市区町村から所得の情報が届くまで時間がかかります。板橋区はその点も注意書きにしています。
いくら変わるか——東京23区で年45,640円
| 軽減 | 年額(均等割) | 月あたり |
|---|---|---|
| なし | 65,200円 | 5,433円 |
| 2割軽減 | 52,160円 | 4,346円 |
| 5割軽減 | 32,600円 | 2,716円 |
| 7割軽減 | 19,560円 | 1,630円 |
軽減なしと7割軽減の差は、年45,640円。2年ぶんなら9万円を超えます。留学生の生活費の記事で見たとおり、東京の1か月の支出は19万9千円です。ここで浮く月3,800円は、その中では小さくない額です。
保険料の額は市区町村ごとに違います。金額そのものは自分の役所で確かめてください。ただし7割・5割・2割という割合と、申告が要るという話は、どこに住んでいても同じです。
自分がどれに当たるか——年収108万円が7割のライン
判定は前年1月から12月までの所得で行います。世帯主と、国保に入っている人ぜんぶの合計です。基準(令和8年度)はこうなっています。
- 7割軽減……43万円 +{(給与所得者等の数−1)×10万円}以下
- 5割軽減……上の額 +(国保加入者数×31万円)以下
- 2割軽減……上の額 +(国保加入者数×57万円)以下
「所得」は手取りでも年収でもありません。給与だけで暮らしている人は、年収から給与所得控除を引いた額です。国税庁によれば、令和7年分以降は収入190万円までなら控除は65万円。ひとり暮らし(国保加入者1人・給与所得者1人)なら、年収から65万円を引いた額で判定することになります。

ここに、留学生だけがぶつかる線があります。週28時間を上限まで使うと、東京都の最低賃金1,226円で月137,312円。年に直すと約165万円で、ちょうど2割軽減のラインです。時給が上がれば、軽減はなくなります。
働く時間を減らせと言いたいのではありません。時給を上げて時間を減らすほうが、保険料の面でも得になるということです。同じ収入なら軽減は変わりませんが、収入を増やすときは、増えた分から保険料も出ていくと知っておいてください。
何をすればいいか——役所でやる3つのこと
やることは申告だけです。保険の窓口ではなく、税の窓口に行きます。
- 住んでいる市区町村の課税担当課(区役所なら税務課・課税課)へ行き、住民税の申告をしたいと伝える
- 前年に収入がなければ「収入はありませんでした」と書いて出す。ゼロの申告にも用紙があります
- アルバイトをしていたなら、その額を書く。源泉徴収票があれば持っていく
持ち物は、在留カード、マイナンバーが分かるもの、印鑑、(あれば)源泉徴収票。自治体によって少し違うので、行く前に電話で確かめると確実です。
すでに確定申告をした人は、その情報が役所に回るので重ねて申告する必要はありません。アルバイト先が1か所だけで年末調整を受けた人も同じです。
払えないときは、放っておかないでください
軽減を受けても払えない金額のことがあります。そのときは2つの道があります。
- 納付相談……分割にしてもらう。窓口に行けばその場で相談できます
- 減免……災害にあった、収入が急に減ったなどの事情がある場合。軽減とは別の制度で、こちらは自分から申請しないと始まりません
いちばんよくないのは、払えないまま連絡しないことです。国民健康保険料の滞納は、2027年4月から始まる永住許可の取消しで、対象になる「公租公課の未払い」に含まれます。ただし払えないこと自体が理由になるのではありません。分納や猶予の手続きをしていれば、該当しない例として挙げられています。手続きをしているかどうかが分かれ目です。
終わりの判断——直せるのは2年前まで
この話には期限があります。板橋区は国民健康保険法第110条の2をあげて、保険料の決定と変更は、その年度の最初の納期(通常6月30日)の翌日から2年を過ぎるとできないと書いています。
つまり、今年の分だけでなく去年の分も直せる可能性があります。逆に、3年前に払いすぎた分は、正しくても戻りません。
だから判断はこうなります。納付書の金額に心当たりがないなら、今週のうちに役所へ電話してください。「所得の申告をしているか」「軽減がかかっているか」の2つを聞くだけです。かかっていれば、それで終わりです。かかっていなければ、申告に行く日を決めてください。
そして来年からは、収入があってもなくても、毎年2月から3月のあいだに申告する。これで二度と満額の請求は来ません。
よくある質問(FAQ)
Q. 留学生は国民健康保険が免除になると聞きました。本当ですか。
免除という制度はありません。あるのは軽減(所得が低い世帯の均等割が7割・5割・2割引きになる)と、減免(災害などの事情がある人が申請する)です。学生だから、留学生だから外れるという扱いはありません。
Q. 前年に日本にいませんでした。それでも申告が要りますか。
要ります。日本での所得がゼロだったことを役所に伝えるための申告です。何もしないと所得は「ゼロ」ではなく「不明」のまま扱われ、軽減の判定ができません。
Q. アルバイト先が源泉徴収してくれています。それでも申告が要りますか。
1か所だけで働いて年末調整を受けたなら、その情報が役所に届くので不要です。2か所以上で働いている人、年末調整を受けていない人は申告してください。払いすぎた所得税が戻ることもあります。
Q. 軽減がかかっているかどうかは、どこを見れば分かりますか。
納付書や決定通知書に「軽減」「7割」などの表示があります。分からなければ役所の国保の窓口に電話して、被保険者証の記号番号を伝えれば教えてもらえます。
Q. 国民年金の学生納付特例とは違うものですか。
別の制度です。学生納付特例は国民年金の保険料を猶予する制度で、自分で申請します。国保の軽減は国民健康保険料の話で、所得が判明していれば自動でかかります。両方に当てはまる人が多いので、どちらもやってください。
Q. 家族と住んでいます。判定はどうなりますか。
世帯主と、国保に入っている人全員の所得を合計して判定します。世帯主が国保に入っていなくても、その所得は数に入ります。だから家族の誰か1人が申告していないだけで、世帯全体の軽減が止まります。
まとめ
- 国民健康保険料の軽減とは、前年の所得が低い世帯の均等割が7割・5割・2割引きになる制度で、国籍の条件はない
- 東京23区の均等割は年65,200円(40歳未満)。7割軽減なら19,560円で、差は年45,640円
- 所得が役所に判明していないと軽減は来ない。収入ゼロでも申告が要る
- ひとり暮らし・給与だけなら、年収108万円以下で7割、139万円以下で5割、165万円以下で2割
- 週28時間を上限まで使うと、2割のラインに触れる
- 払えないときは納付相談か減免。滞納したまま連絡しないのがいちばん悪い
- 直せるのは最初の納期の翌日から2年まで。心当たりがあるなら今週のうちに役所へ電話する
参照:板橋区「国民健康保険料の軽減・減免」/厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」/東京都保健医療局「国民健康保険事業費納付金及び標準保険料率について」/国税庁「No.1410 給与所得控除」
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