この記事は2026年9月23日に、母子保健法と子ども・子育て支援法の条文(e-Gov)、こども家庭庁の「妊婦健診に関する取組み」「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果(令和7年4月)」「妊婦のための支援給付」のリーフレットと自治体職員向けQ&A、母子健康手帳情報支援サイト、新宿区・大阪市・江戸川区の案内で確かめて書いています。
先に結論
- 妊娠が分かったら、住民票のある市区町村に「妊娠届」を出します。その場で母子健康手帳(母子手帳)がもらえます。無料です。
- 母子健康手帳とは、妊娠中の健診から子どもの予防接種までを1冊に記録する手帳です。国籍に関係なく、妊娠届を出した人に市区町村が渡します(母子保健法16条)。
- 妊婦健診の受診票(補助券)は、全国すべての市区町村で14回分以上。公費の平均は1人113,647円です。券を超えた検査は自己負担になることがあります。
- 2025年4月から「妊婦のための支援給付」があります。妊娠の確認後に5万円、出産予定日の8週間前からの届出で赤ちゃん1人につき5万円。1人なら合計10万円です。
- 条件は住民票があること。国籍も、国保か会社の保険かも関係ありません。手帳の外国語版は10言語あります。
これが分かると、最初の健診から受診票を使えて、10万円の申請も取りこぼさずに済みます。どの窓口で何を言えばいいかも、行く前に決められます。
病院で「おめでとうございます」と言われた。帰り道、次に何をすればいいのか分からない。日本人の友達に聞くと「市役所で母子手帳をもらうんだよ」と教えてくれます。でも「外国人でももらえるの?」「英語のはある?」「お金の話は?」と続けると、答えが止まります。日本人にとっては当たり前すぎて、考えたことがないからです。
外国人の妊娠届はどこに出す?——住民票のある市区町村へ
妊娠届は、住民票のある市区町村の窓口に出します。保健センターや、区役所の保健福祉センターが窓口のことが多いです。母子保健法15条は、妊娠した人は「速やかに」市町村長に届け出るように、と定めています。
日数の決まりはありません。大阪市は「期日はありませんが、妊娠が分かりましたら早めに」と案内しています。新宿区は「できれば11週までに」と書いています。
順番は、先に産婦人科です。こども家庭庁の案内も「妊娠が分かったら産婦人科を受診し、自治体の窓口で妊娠の届出をして母子健康手帳をもらう」という流れです。最初の受診は、まだ受診票が無いので自費になります。

持ち物は市区町村ごとに少しずつ違います。新宿区の場合は次の3つです。
- 妊婦の個人番号が分かるもの(マイナンバーカード・通知カード・個人番号の入った住民票のどれか)
- 届け出る人の本人確認書類(在留カードでよい)
- 委任状(同じ世帯でない人が代わりに出すときだけ)
病院でもらった妊娠週数・出産予定日・病院名が分かる紙があれば、一緒に持っていきます。新宿区のように、マイナポータルで届出だけ先に電子申請できるところもあります。その場合も、手帳は窓口に取りに行きます。
母子手帳とは?外国人ももらえる?——国籍は関係なく1冊もらえる
母子健康手帳は、妊娠中の健診の結果、出産の記録、子どもの成長、健診、予防接種を1冊にまとめる手帳です。母子保健法16条は「市町村は、妊娠の届出をした者に対して、母子健康手帳を交付しなければならない」と定めています。国籍の条件は書かれていません。
健診のたびに、医師や助産師が書き込みます。だから、妊婦健診には毎回持っていきます。子どもが生まれたあとも、小児科の健診と予防接種で使い続けます。
母子手帳の外国語版・英語版はある?——10言語。ただし正式な手帳は日本語
あります。こども家庭庁は、母子健康手帳の多言語版を10言語で作っています。英語・中国語・韓国語・ベトナム語・ポルトガル語・ネパール語・タガログ語・インドネシア語・スペイン語・タイ語です。こども家庭庁の「母子健康手帳情報支援サイト」の「外国人の方へ」から、誰でもダウンロードできます。
窓口で外国語版がもらえるかは、市区町村によります。新宿区は、妊婦本人が外国籍で日本語が分からない場合に、外国語版を「参考資料として」1人1冊渡しています。夫だけが外国籍の場合は対象外で、自分で買うように案内しています。こども家庭庁の案内も「外国語の母子健康手帳をもらうことができるかも聞いてみましょう」という書き方です。
「外国人の母子手帳は有料?」と検索されるのは、ここが理由です。日本語の手帳そのものは無料です。外国語と日本語を並べて書いた版は、公益財団法人母子衛生研究会が10言語で販売していて、窓口で出ない場合は自分で買うことになります。
妊婦健診は何回・いくら?——受診票14回分以上は全国共通
妊婦健診の回数は、国の基準(妊婦に対する健康診査についての望ましい基準)で14回程度とされています。こども家庭庁が示す間隔は次のとおりです。
- 妊娠初期から23週まで:4週間に1回
- 24週から35週まで:2週間に1回
- 36週から出産まで:1週間に1回
この健診の費用は、市区町村が妊娠届のときに渡す受診票(受診券・補助券とも呼びます)で助成されます。こども家庭庁の調査(令和7年4月1日現在)では、全国1,741のすべての市区町村が14回以上を助成しています。1人あたりの公費の全国平均は113,647円でした。
大阪市の例を見ると、券の中身がつかめます。
| 大阪市の受診票(令和7年度) | 公費で出る額 |
|---|---|
| ①(8〜11週ごろ・血液検査などを含む) | 24,940円 |
| ②〜⑪の基本の健診(各回) | 3,780円 |
| ⑫〜⑭(検査の多い回) | 8,560円〜17,380円 |
| 超音波検査(4回・各回) | 4,780円 |
| 合計(1人を妊娠) | 122,020円 |
「補助券が足りない」「補助券なしだといくら」と心配になるのは、この額を超える分です。大阪市も江戸川区も、検査の内容によっては自己負担が出ることがある、と書いています。妊娠中に病気の治療が必要になった分は受診票の外で、健康保険の診療になります(江戸川区)。治療費が高くなったときは高額療養費制度で上限があります。
妊婦のための支援給付とは?——2回に分けて合計10万円
妊婦のための支援給付とは、妊娠した人に市区町村が現金などを渡す、2025年4月に始まった制度です。子ども・子育て支援法にもとづいていて、それまでの「出産・子育て応援交付金」を法律の制度にしたものです(こども家庭庁)。
額は法律で決まっています。「胎児の数に1を足した数×5万円」です(10条の12)。1人なら10万円、双子なら15万円になります。受け取るのは2回です。
- 1回目・5万円——医療機関で胎児の心拍が確認されたあと、住民票のある市区町村に申請する。妊娠届の用紙で一緒に申し込めるようにしている市区町村もある(こども家庭庁Q&A)
- 2回目・赤ちゃん1人につき5万円——出産予定日の8週間前の日から、お腹の子の人数を届け出る。出産後の届出でもよい
申請のときには、保健師などとの面談がセットになっています(こども家庭庁のリーフレット)。現金は妊婦本人の口座に振り込まれます。こども家庭庁のQ&Aは、子どもの名義の口座には振り込めないとしています。夫の口座も使えないので、日本に来たばかりの人は自分名義の銀行口座を先に作っておいてください。自治体によっては、現金の代わりにクーポンを選べます。
流産・死産の場合も対象です。心拍が確認されたあとの人工妊娠中絶も対象になります。この給付には税金がかかりません(10条の7)。
国保でも社会保険でも同じ?在留資格は?——条件は住民票だけ

妊婦のための支援給付の条件は、法律に1行で書かれています。「妊婦であって、日本国内に住所を有するもの」(10条の8)。こども家庭庁のQ&Aは、日本国籍を持つかどうかに関わらない、と答えています。
在留資格の種類も条件にありません。Q&Aでは、短期の在留資格の人について「住民票の有無でご判断ください」とされています。つまり分かれ目は住民票です。3か月を超えて住む在留資格で住民登録をしていれば対象で、短期滞在で住民票が無ければ対象外です。
入っている健康保険も関係ありません。妊娠届・母子健康手帳・受診票・支援給付は、どれも住民票のある市区町村の制度です。国民健康保険でも、会社の健康保険でも、家族の扶養に入っていても同じです。
健康保険から出るのは、出産のときの出産育児一時金(1児につき50万円)です。こちらは出産後の手続きなので、出産したときの手続きと一時金の記事で、出生届14日・赤ちゃんの在留資格30日とあわせて確認してください。
引っ越したら・里帰りしたら?——受診票は市区町村ごと
受診票は、出した市区町村の券です。大阪市は、市外に引っ越したら大阪市の受診票は使えなくなるので、引っ越し先で新しく受け取るように案内しています。母子健康手帳はそのまま使えます。転居の手続きのあと、新しい市区町村の保健センターにも行ってください。
支援給付も同じです。引っ越したら、転入先の市区町村でもう一度認定を申請します。すでに受け取った分は差し引かれます(10条の12第3項)。
住んでいる市区町村の外の病院で健診を受ける場合も、全国すべての市区町村に何らかの助成があります(こども家庭庁の調査)。多いのは、いったん自分で払って、あとから申請して戻してもらう「償還払い」です。大阪市の場合、申請の期限は妊娠が終わった日から1年以内です。領収書は捨てずに取っておいてください。
母国に帰って産むつもりの人は、住民票をどうするかで支援給付が変わります。自治体向けQ&Aでは、日本に住民票を残したままなら、海外にいても申請と届出ができる扱いです。一方、子の人数を届け出る前に住民票を抜く(転出する)と、2回目は届け出られません。日本に戻って住所を持ち直せば、時効の2年の中で届け出られます。帰る前に1回目の申請を済ませ、2回目の届出のしかたを窓口で聞いておいてください。
妊娠届が遅れたら?——罰則はないが、受診票とお金を取りこぼす
母子保健法には、妊娠届を出さなかったときの罰則はありません。それでも遅れると損をします。
- 手帳をもらう前の健診は、あとから助成されないことがあります。新宿区は、交付前に自費で受けた健診は助成の対象外と明記しています
- 契約している病院で受診票を忘れた日の分は、償還払いもできません(大阪市)
- 支援給付の申請には期限があります。申請できるようになった時から2年で時効です(こども家庭庁Q&A)
病院で心拍が確認されたら、その週のうちに妊娠届を出すくらいの気持ちでいてください。すでに何回か自費で受けてしまった人も、今日から出せば、残りの健診には受診票が使えます。
お金が払えない・言葉が不安なときは?——面談の保健師に言う
母子保健法9条の2は、市区町村に母子保健の相談に応じることを義務づけています。支援給付の面談は、出産後まで続く相談支援とセットです。
「健診のお金が心配」「日本語の説明が分からない」「近くに頼れる人がいない」。こういうことを最初の面談で言っておくと、使える制度や通訳の手配につないでもらえます。妊産婦と子どもの相談をまとめて受ける「こども家庭センター」を置いている市区町村もあります(児童福祉法10条の2・設置は努力義務)。出産後に体と育児がつらいときは、泊まりや通いで助けてもらえる産後ケア事業もあります(母子保健法17条の2)。
こども家庭庁のサイトは、暮らし全般の相談先として出入国在留管理庁の「外国人在留総合インフォメーションセンター」も案内しています。働いている人は、会社を休んだ間のお金も調べておきましょう。産休・育休の給付は、国籍に関係なく雇用保険と健康保険の条件で決まります。
終わりの判断——自分はどれか
- 病院で心拍が確認されたばかり——在留カードとマイナンバーが分かるものを持って、住民票のある市区町村の保健センターへ行く。妊娠届・母子健康手帳・受診票・支援給付の1回目を、今日か今週中に1回で済ませる。
- 日本語の手帳が読めるか不安——窓口で「外国語版の母子健康手帳はありますか」と聞く。無ければ、こども家庭庁のサイトから自分の言語の版を今日ダウンロードしておく。
- 妊娠中に引っ越す・よその病院で産む——引っ越し先の保健センターで受診票をもらい直し、支援給付を申請し直す。償還払いの領収書を今日からファイルにまとめる。
- もう出産予定日が近い——予定日の8週間前を過ぎていたら、今日、子の人数の届出(2回目の5万円)を出す。出産後の出生届14日と在留資格30日の段取りも決める。
よくある質問(FAQ)
Q. 外国人でも母子手帳はもらえますか?
もらえます。母子保健法16条は、妊娠の届出をした人に市区町村が母子健康手帳を渡すと定めていて、国籍の条件はありません。住民票のある市区町村に妊娠届を出すと、その場で無料でもらえます。
Q. 母子手帳の英語版はありますか?
あります。こども家庭庁が英語を含む10言語の多言語版を作っていて、母子健康手帳情報支援サイトからダウンロードできます。窓口で外国語版がもらえるかは市区町村によります。医師が記入する正式な手帳は日本語版です。
Q. 妊婦健診の補助券は何枚もらえますか?
全国すべての市区町村が14回分以上を助成しています(こども家庭庁・令和7年4月1日現在)。1人あたりの公費の全国平均は113,647円で、券の額を超える検査は自己負担になることがあります。
Q. 妊婦のための支援給付はいくらですか?外国人ももらえますか?
胎児の数に1を足した数×5万円で、1人なら合計10万円です。妊娠の確認後に5万円、出産予定日の8週間前からの届出で1人につき5万円が出ます。条件は日本国内に住所があることで、国籍は関係ありません。住民票の有無で判断されます。
Q. 妊娠届はいつまでに出せばいいですか?
法律は「速やかに」と定めていて、日数の期限はありません。ただし手帳をもらう前に自費で受けた健診は助成されないことがあるので、病院で心拍が確認されたらすぐに出すのが得です。
Q. 国民健康保険と会社の健康保険で、もらえるものは変わりますか?
変わりません。母子健康手帳・受診票・妊婦のための支援給付は住民票のある市区町村の制度で、入っている健康保険の種類は条件ではありません。健康保険から出るのは出産のときの出産育児一時金です。
まとめ
日本で妊娠したら、産婦人科で心拍を確認し、住民票のある市区町村に妊娠届を出します。その場で母子健康手帳と、14回分以上の妊婦健診の受診票がもらえます。2025年4月からは、妊婦のための支援給付として1人なら合計10万円も出ます。
条件は住民票で、国籍も健康保険の種類も関係ありません。届出に期限はありませんが、遅れるほど自費の健診が増えます。言葉やお金の不安は、最初の面談で保健師に伝えてください。
出典(公式):e-Gov法令検索「母子保健法」/「子ども・子育て支援法」/こども家庭庁「妊婦健診に関する取組み」/同「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果」/同「妊婦等包括相談支援事業・妊婦のための支援給付」/同「母子健康手帳情報支援サイト 外国人の方へ」/新宿区「母子健康手帳の交付(妊娠の届出)」/大阪市「妊婦健康診査」。2026年9月23日に確認したものです。持ち物・受診票の額・外国語版の扱いは市区町村ごとに違うので、住んでいる市区町村の保健センターで確かめてください。
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