この記事は2026年10月18日に、厚生労働省の確定拠出年金のページとQ&A、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)の自動移換と脱退一時金の案内、e-Govの確定拠出年金法・施行令、国税庁のタックスアンサーで確かめて書いています。
先に結論
- 企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、会社が掛金を出し、あなたが運用して、その結果で受け取る額が決まる会社の年金です。厚生年金やiDeCoとは別の制度です。
- 会社を辞めたら、資格を失った月の翌月から6か月以内に、お金の行き先を決めます。転職先の企業型DCかiDeCoへ移す(移管=正式には「移換」)か、条件に合えば脱退一時金を請求します。
- 放置すると「自動移換」されます。運用は止まり、移されるときに4,348円、その後は月98円の手数料が資産から引かれます。
- 外国籍で帰国する人は、掛金の期間が5年以下か資産が25万円以下なら、脱退一時金で受け取れます。6か月以内なら会社のDCの窓口へ、過ぎたら資格を失ってから2年以内にiDeCoの窓口へ請求します。
- 勤続3年未満で辞めると、会社が出した掛金の分が会社に戻ることがあります。会社の規約に書いてあるときだけです。
これが分かると、最後の出勤日までに「どこへ移すか」「帰国後にいくら受け取れるか」を決めておけるので、6か月たって手数料だけ引かれる状態を避けられます。

最終出勤日が決まった。人事から書類の束を渡された。その中に、確定拠出年金の「資格喪失」の案内が入っています。日本人の同僚に「これ、どうするの?」と聞いても、「iDeCoに移せばいいんじゃない」と返ってくるくらいです。でも、あなたは来年、国に帰るかもしれない。日本で積み立てた年金は、移すべきか、受け取れるのか。日本人の同僚は、この問いを自分ごととして考えたことがありません。
企業型DCとは?——厚生年金・iDeCoとの違い
確定拠出年金とは、出した掛金とその運用益の合計で、将来の受け取り額が決まる年金です(厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」)。そのうち、会社が掛金を出すのが企業型DCです。自分で掛金を出すのがiDeCoです。
企業型DCに入るのは、原則として、その制度がある会社で働く厚生年金の加入者です。会社の規約にあれば、本人が掛金を上乗せすることもできます(マッチング拠出)。運用する商品は、会社が契約した運営管理機関が3本から35本の中で示し、あなたが選びます。

給料から引かれる厚生年金は、国の年金です。企業型DCは、その上に会社が乗せている私的な年金です。帰国するときの払い戻しも別々です。厚生年金は日本年金機構に脱退一時金を請求し、企業型DCは企業型DCの窓口に請求します。片方だけ出して終わりにしないでください。
企業型DCを退職したらどうなる?——6か月以内に移換か請求
辞めると、企業型DCの加入者の資格を失います。法律では、会社に使われなくなった日の翌日です(確定拠出年金法11条)。あなたの資格喪失日は、会社から届く書類か、DCの記録関連運営管理機関のサイトで確かめてください。
そこから期限が始まります。資格を失った日が属する月の翌月から数えて6か月以内に、次のどれかをします(厚生労働省「年金資産の持ち運び」/確定拠出年金法83条)。
- 転職先の企業型DCへ移す
- iDeCoへ移す
- 確定給付企業年金(DB)や、企業年金連合会の通算企業年金へ移す
- 脱退一時金の条件に合えば、請求する

数え方の例です。資格を失った日が4月1日なら、翌月の5月から数えて10月までの6か月です。読者の間では「移管」と呼ばれることが多い手続きで、制度上の名前は「移換」です。窓口では「移換」と言えば通じます。
2026年4月1日から、会社は社員が資格を失うと見込まれる時点で、この手続きを説明する義務を負うことになりました(厚生労働省「2025年の制度改正」)。辞める前に人事が説明しないなら、あなたから聞いてかまいません。
企業型DCを退職後に放置したら?——自動移換の手数料と3つの損
会社を辞めたら、会社で積み立てたお金は精算されて、最後の給料と一緒に戻ってくる。あなたの国では、それが普通かもしれません。日本の企業型DCは、辞めただけでは現金になりません。6か月のあいだに何もしないと、お金は国民年金基金連合会に移されます。これを「自動移換」といいます。
厚生労働省は、自動移換の損を3つ挙げています。
- 運用されない
- 管理手数料が引かれる
- 自動移換されている期間は、60歳から受け取るための加入期間に数えない。受け取れる年齢が遅くなることがある

手数料の額はiDeCo公式サイトの「自動移換された方」に表があります。移されるときに特定運営管理機関3,300円と国民年金基金連合会1,048円で、計4,348円。置いている間は月58円と月40円で、計98円です。管理手数料は自動移換された月の4か月後からかかり、年度分をまとめて4月に資産から引かれます。資産が0円なら負担はありません。
受け取りの年齢も動きます。DCの老齢給付金は原則60歳からですが、60歳の時点で加入期間などが10年に満たないと、61歳から65歳へ段階的に遅くなります。自動移換の期間はこの10年に入りません。
例外が一つあります。資格を失ってから6か月以内に、iDeCoや別の会社の企業型DCに加入したことが確認できた人は、移換の申出をしなくても、お金がそちらへ移されます。
転職したら企業型DCはどこへ?——転職先のDCかiDeCoへ移換
日本で次の会社に移る人は、まず転職先に企業型DCがあるかを人事に聞きます。あれば、転職先の担当部署に移換を頼みます。
転職先にない場合や、自営業になる場合は、iDeCoへ移します。iDeCo公式によると、iDeCoを扱う運営管理機関を自分で選んで連絡し、「個人別管理資産移換依頼書(K-003)」を出します。掛金も続けるなら「個人型年金加入申出書(K-001)」も一緒に出します。運用だけ続ける人は「運用指図者」と呼ばれます。

iDeCoへ移すときは、国民年金基金連合会の手数料2,829円がかかります(iDeCo公式「新規加入・移換時の手数料」)。運営管理機関の手数料は機関ごとに違うので、申し込む前に確かめてください。どの商品で運用するかは、この記事では扱いません。辞めたときの在留資格の届出や国民年金の手続きは、外国人の退職手続きに順番どおりにまとめています。
外国人が帰国するときの企業型DC——脱退一時金の条件
企業型DCは、原則として60歳まで引き出せません。例外が脱退一時金です。2022年5月からは、資産が1.5万円を超えていても、条件を満たせばiDeCoに移さずに企業型DCから脱退一時金を受け取れるようになりました(厚生労働省「2020年の制度改正」)。
帰国する外国籍の人に関係する条件は、次のとおりです(厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」)。
- 60歳未満であること
- 企業型DC・iDeCoの加入者や運用指図者でないこと
- iDeCoに加入できない人であること(「日本国籍を有しない海外居住者」はこれに当たる)
- 障害給付金を受ける権利がないこと
- 掛金を出した期間が5年以下、または資産が25万円以下であること
- 企業型DCの窓口に請求するなら、資格を失った月の翌月から6か月以内であること(確定拠出年金法 附則2条の2第1項3号)
3つ目の条件があるので、請求は日本を出て、海外に住んでからになります。日本に住んで公的年金に入っている間は、多くの人がiDeCoに加入できる側にいるからです。日本国籍の人は海外に住んでも国民年金に任意加入できるので、この道は使えません。

6か月を過ぎても、道は閉じません。自動移換されたお金は、iDeCoの脱退一時金の条件で請求できます。期限は、最後に資格を失った日から2年以内です。厚生労働省のQ&A(No.293)も、帰国した外国籍の元加入者は、iDeCoの運用指図者でなければどちらの道でも請求できる、と答えています。
どちらの条件も超える人、つまり5年を超えて掛金を出し、資産も25万円を超える人は、脱退一時金を受け取れません。お金は60歳以降まで日本の制度に残ります。日本の公的年金を帰国後に受け取る話は帰国後に年金を海外で受け取る方法にあります。
資産が1.5万円以下なら、別の条件で請求できます。企業型DCやiDeCoの加入者・運用指図者でなく、6か月以内であれば足り、日本に住んだままでもかまいません。
脱退一時金はいくら?手続きと税金は?
金額は、あなたの資産の額です。正確には、請求した日から3か月以内で規約が決めた日の資産額です(確定拠出年金法施行令59条)。自動移換されたあとに受け取ると、受け取りの手数料4,180円が引かれ、海外の口座へ送るなら送金の手数料も別にかかります。
請求先は時期で変わります。
- 6か月以内:会社の企業型DCの記録関連運営管理機関(会社のDCのサイトや通知に連絡先がある)
- 自動移換されたあと:iDeCoの運営管理機関に「脱退一時金裁定請求書 兼 個人別管理資産移換依頼書(連合会用)(K-016)」を出す。支払うのは特定運営管理機関(iDeCo公式「給付について」)
生年月日を示す書類として戸籍謄本などを求められても、海外に住む人は用意できません。厚生労働省のQ&A(No.290)は、その場合パスポートの写しで代えられるとしています。最後に日本を出国した日・氏名・生年月日・国籍・署名・在留資格が分かるページを写してください。帰国前にパスポートの出国スタンプのページを確かめておくと、あとで慌てません。
税金です。日本に住んでいる人が受け取る脱退一時金は、所得税の「一時所得」として計算されます(所得税法施行令183条)。一時所得は、受け取った額から特別控除の最高50万円を引き、その半分をほかの所得と合わせて税金を計算します(国税庁 No.1490)。1.5万円以下の脱退一時金だけなら、その年にほかの一時所得がなければ50万円の控除の内側に収まります。
日本を出たあとに受け取る場合の日本の税の扱いは、国税庁の案内で確かめられませんでした。請求するときに、記録関連運営管理機関に「源泉徴収されますか、いくらですか」と聞いてください。住民税などの手続きを日本に残す人は、出国前に納税管理人を決めておくと、日本から届く書類を受け取ってもらえます。
勤続3年未満で辞めたら?——会社に返す「事業主返還」
入社して2年で辞める人は、もう一つ確かめることがあります。企業型DCの規約には、勤続3年未満で辞めた人について、会社が出した掛金の分の全部か一部を会社に返す決まりを置けます(確定拠出年金法3条3項10号)。これを「事業主返還」といいます。

3年は、DCに入っていた期間ではなく、会社に勤めた期間で数えます(厚生労働省Q&A No.76)。勤続3年以上なら、懲戒解雇でも返還は認められません(同No.77)。返還がある会社では、移したり受け取ったりできるのは、返還する分を引いた残りです。規約に置くかどうかは会社が決めるので、自分の会社の規約か人事に確かめてください。
6か月を過ぎてしまったら?——2年以内なら、まだ請求できる
すでに6か月を過ぎていても、あきらめないでください。自動移換されたかどうかは、自動移換者専用コールセンター(03-5958-3736、平日9時〜17時30分)で確かめられます。
- 日本で働き続ける人:今からでもiDeCoや転職先の企業型DCへ移せます。新しくiDeCoや企業型DCに加入したことが確認できれば、申出なしで移されます
- 帰国した人:資格を失ってから2年以内なら、iDeCoの窓口からK-016で脱退一時金を請求できます
- 2年を過ぎた人:脱退一時金は請求できず、60歳以降に老齢給付金として受け取ることになります
放っておく期間が長いほど、管理手数料が積み重なり、60歳からの加入期間にも数えられない月が増えます。気づいた日が、いちばん早く動ける日です。
企業型DCを一枚で——数字・期限・出典
下の表は、すべて2026年10月18日に公式ページを開いて確かめた内容です。
| 知りたいこと | 公式の内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 移す期限 | 資格を失った日が属する月の翌月から6か月以内 | 厚生労働省「年金資産の持ち運び」/確定拠出年金法83条 |
| 放置したら | 国民年金基金連合会へ自動移換。運用されない・手数料・加入期間に数えない | 同上 |
| 自動移換の手数料 | 移されるとき計4,348円、月計98円(4か月後から)、iDeCoへ移すとき計3,379円、脱退一時金の受け取り4,180円 | iDeCo公式「転職・退職された方へ」 |
| 脱退一時金(1.5万円以下) | 加入者・運用指図者でない、6か月以内 | 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」/確定拠出年金法 附則2条の2 |
| 脱退一時金(1.5万円超) | 60歳未満、iDeCoに加入できない(外国籍の海外居住者など)、5年以下または25万円以下、6か月以内 | 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」/厚生労働省「2020年の制度改正」 |
| 6か月を過ぎたら | iDeCo側の脱退一時金。資格を失った日から2年以内 | 同上 |
| パスポートで代用 | 国外に住み戸籍謄本などが取れなければ、パスポートの写しで可 | 厚生労働省「確定拠出年金Q&A」No.290 |
| 事業主返還 | 勤続3年未満なら、規約で会社の掛金分の全部か一部を返還と定められる | 確定拠出年金法3条3項10号 |
| 日本に住む人の税金 | 脱退一時金は一時所得。特別控除は最高50万円、その半分を合算 | 国税庁 No.1490 |
上から読むと、時計は2つです。会社の窓口に請求できる6か月と、iDeCoの窓口に請求できる2年。帰国する人は、5年と25万円のどちらかを下回っているかで道が決まります。
終わりの判断——自分はどれか
- 日本で転職し、転職先に企業型DCがある——入社したら人事に移換の手続きを頼む。今日、前の会社のDCの資格喪失日を書類で確かめる。
- 日本に残るが、次の職場にDCがない・自営業になる——iDeCoの運営管理機関を選び、K-003(掛金も出すならK-001も)を6か月以内に出す。今日、運営管理機関の手数料を比べ始める。
- 帰国する・掛金の期間が5年以下か資産25万円以下——出国スタンプの入ったパスポートの写しを用意し、6か月以内に会社のDCの窓口へ請求する。今日、記録関連運営管理機関の連絡先を控える。
- 帰国する・5年超かつ25万円超——脱退一時金は受け取れない。60歳以降に受け取る前提で、今日、記録関連運営管理機関に海外の住所へ変えられるかを聞く。
よくある質問(FAQ)
Q. 企業型DCを退職したらどうなりますか?
加入者の資格を失い、資格を失った月の翌月から6か月以内に、転職先の企業型DCやiDeCoへ移すか、条件に合えば脱退一時金を請求します。何もしないと国民年金基金連合会に自動移換されます。
Q. 企業型DCを退職後に放置するとどうなりますか?
自動移換されます。運用されず、移されるときに計4,348円、その後は月計98円の手数料が資産から引かれます。自動移換の期間は、60歳から受け取るための加入期間に数えられません。
Q. 外国人が帰国したら企業型DCの脱退一時金はもらえますか?
60歳未満で、掛金を出した期間が5年以下か資産が25万円以下なら、海外に住んでから請求できます。資格を失った月の翌月から6か月以内なら会社のDCの窓口へ、過ぎたら資格を失ってから2年以内にiDeCoの窓口へ請求します。
Q. 企業型DCの脱退一時金に税金はかかりますか?
日本に住んでいる人が受け取る場合は一時所得です。最高50万円の特別控除を引いた額の半分が、ほかの所得と合わせて課税されます。日本を出たあとに受け取る場合の扱いは、請求先の記録関連運営管理機関に確かめてください。
Q. 企業型DCをiDeCoへ移管するには?
iDeCoを扱う運営管理機関を自分で選び、個人別管理資産移換依頼書(K-003)を出します。掛金も続けるなら個人型年金加入申出書(K-001)も出します。資格を失った月の翌月から6か月以内に出してください。
Q. 勤続3年未満で辞めると企業型DCは減りますか?
会社の規約に事業主返還の定めがあれば、会社が出した掛金の分の全部か一部が会社に返されることがあります。3年はDCの加入期間ではなく勤続期間で数えます。規約にあるかは人事に確かめてください。
まとめ
企業型DCは、辞めただけでは現金になりません。資格を失った月の翌月から6か月以内に、転職先のDCかiDeCoへ移すか、条件に合えば脱退一時金を請求します。放置すれば自動移換で、運用は止まり、手数料だけが引かれ、60歳からの加入期間にも数えられません。
帰国する外国籍の人には出口があります。掛金の期間が5年以下か資産が25万円以下なら、海外に住んでから脱退一時金を請求できます。6か月以内なら会社の窓口、過ぎても2年以内ならiDeCoの窓口です。厚生年金の脱退一時金とは別の請求なので、両方を出してください。
出典(公式):厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」/同「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」/同「2020年の制度改正」/同「2025年の制度改正」/同「確定拠出年金Q&A(2026年10月1日現在)」/iDeCo公式「転職・退職された方へ」/iDeCo公式「給付について」/iDeCo公式「新規加入・移換時の手数料」/e-Gov「確定拠出年金法」/e-Gov「確定拠出年金法施行令」/e-Gov「所得税法施行令」/国税庁「No.1490 一時所得」(すべて2026年10月18日確認)。手数料や手続きは、あなたの会社のDCの記録関連運営管理機関でも必ず確かめてください。
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