この記事は2026年9月23日に、施行期日を定める政令、e-Govの育成就労法(2027年4月1日施行版)、出入国在留管理庁の「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」「育成就労制度Q&A」、厚生労働省の案内で確かめて書いています。
先に結論
- 育成就労制度とは、技能実習に代わって、人手不足の分野で外国人を3年かけて育て、働き手として確保する制度です。始まるのは2027年4月1日。政令で決まっています。
- 本人の希望で職場を変える「転籍」ができるようになります。ただし同じ業務区分の中だけで、分野ごとに1年か2年は最初の職場で働き、技能と日本語の試験に受かっていることが条件です。
- 日本語は、働き始める前にA1(N5程度)、3年でA2(N4程度)。入国する時点の試験合格は必須ではありません。
- 特定技能1号へ進むには、技能と日本語の試験の合格が必要です。技能実習2号を良好に終えた人のような試験の免除はありません。
- いま日本にいる技能実習生は、技能実習のまま続けます。途中から育成就労に切り替えることはできません。
これが分かると、決まったことと、まだ決まっていないことを分けて、次に受ける試験と職場を変える時期を自分で計算できます。「新しい制度なら今すぐ転職できる」といううわさに振り回されずにすみます。
同じ寮の後輩が、スマホの画面を見せてきます。「技能実習がなくなるって。来年から自由に転職できるらしいよ」。日本人の職場の先輩に聞いても、「そうなの?」で終わります。日本人は技能実習の在留資格を持ったことがないので、名前を聞いたことはあっても中身は知りません。あなたの契約と在留資格にかかわる話なのに、確かな答えをくれる人が近くにいない。調べると、「案」「検討中」の古い記事も混ざって出てきます。
- 育成就労制度とは?——技能実習に代わる「育てて、確保する」制度
- 育成就労制度はいつから?——2027年4月1日。政令で決まっている
- 育成就労と技能実習の違いは?——目的・期間・転籍・移行
- 育成就労で転籍はできる?——同じ業務区分で、1年か2年たってから
- 育成就労の日本語要件は?——働く前にA1、3年でA2
- 育成就労から特定技能への移行は?——試験の合格が条件
- 今の技能実習生はどうなる?——技能実習のまま続ける(経過措置)
- 育成就労にいくらかかる?——送出機関に払うのは月給2か月分まで
- 監理支援機関と外国人育成就労機構とは?
- ルールを破ったら・困ったら?——転籍は自分で勝手に決めない
- まだ決まっていないことは?
- 終わりの判断——自分はどれか
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
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育成就労制度とは?——技能実習に代わる「育てて、確保する」制度
育成就労制度とは、人手不足の分野で、外国人が日本で3年間働きながら特定技能1号の水準まで技能を身につけ、その分野の働き手として確保するための制度です。根拠は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)です。今の技能実習法を改正して、この名前になります。
技能実習との一番の違いは、目的です。技能実習は、技能を母国へ移す「国際貢献」が目的でした。育成就労は、はっきり「日本の人手不足分野で人材を育成し、確保する」ことを目的にしています(育成就労法第1条)。だから、働く人としての権利を守る仕組みが増えました。本人の希望による転籍は、その代表です。
受け入れる分野は17分野です(2026年7月時点)。特定技能の19分野のうち、自動車運送業と航空の2つは育成就労の対象になっていません。分野をまたいで働くことはできず、「夏は農業、冬は漁業」のような働き方は認められません。派遣の形で働けるのは農業と漁業だけです。
育成就労制度はいつから?——2027年4月1日。政令で決まっている
育成就労制度が始まるのは2027年(令和9年)4月1日です。これは案ではありません。改正法(令和6年法律第60号)は2024年6月21日に公布され、施行日を「令和九年四月一日とする」政令が出ています。
制度がどこまで進んでいるかを、段階で並べるとこうなります。
- 法律:公布済み(2024年6月21日)。施行は2027年4月1日
- 施行日:政令で確定
- 分野別運用方針(分野と転籍制限期間などを決めたもの):2026年1月23日に閣議決定
- 省令・分野ごとの告示・運用要領:順に公表中(2026年8月末にも林業・物流倉庫の分が追加された)
- 事前の申請:監理支援機関の許可は2026年4月15日から、育成就労計画の認定は同年9月1日から受付中
つまり、育成就労の在留資格で実際に働き始められるのは2027年4月1日からです。「来年から自由に転職できる」は、時期も中身も正しくありません。
育成就労と技能実習の違いは?——目的・期間・転籍・移行
| 技能実習(今) | 育成就労(2027年4月〜) | |
|---|---|---|
| 目的 | 技能を母国へ移す国際貢献 | 人手不足分野での人材の育成と確保 |
| 期間 | 1号・2号・3号と段階ごと | 原則3年(区分はなく、3年の計画を最初に認定) |
| 本人の希望での転籍 | 認められていない | 条件つきで認められる |
| 前職・帰国後の仕事の要件 | あった | なし |
| 特定技能1号へ | 2号を良好に終えれば試験免除 | 技能と日本語の試験合格が必要 |
| 家族の帯同 | できない | 原則できない |
報酬は、日本人が同じ仕事をする場合と同等以上でなければ、計画が認定されません(育成就労法第9条第9号)。最低賃金も、国籍に関係なく同じ額です。自分の県の額は都道府県別の最低賃金の一覧で確かめられます。家族を呼べない点は技能実習と変わらず、呼べるようになるのは特定技能2号など、家族滞在の条文に入っている在留資格に進んでからです。
育成就労で転籍はできる?——同じ業務区分で、1年か2年たってから
できます。ただし「いつでも、どこへでも」ではありません。転籍には2種類あります。
- やむを得ない事情がある転籍——暴力やパワーハラスメントなどの人権侵害を受けた場合など。技能実習から引き続き認められます。
- 本人の意向による転籍——育成就労で新しくできる転籍です。下の条件を全部満たす必要があります。
本人の意向による転籍の条件は、入管庁のQ&Aでは次のとおりです。
- 転籍先は、今と同じ業務区分の仕事であること
- 最初の職場で、分野ごとに決められた「転籍制限期間」(1年か2年)を超えて働いていること
- 技能の試験(1年目の試験と同じ水準)と、日本語の試験(多くの分野でA2.1、介護はA2.2)に受かっていること
- 民間の職業紹介事業者の紹介を使っていないこと
- 転籍先が「優良」と認められた受入れ機関で、転籍者の割合が上限を超えないこと

転籍制限期間は、法律で「1年以上2年以下の範囲」と決まっていて、分野ごとの年数は分野別運用方針で決まっています。2年の分野でも、受入れ機関が自分の判断で1年にすることはできます。1年を超える期間にする受入れ機関は、分野ごとに決めた待遇の向上をしなければなりません。一度転籍したあと、もう一度転籍するときも、また制限期間を過ぎている必要があります。
転籍を希望するときは、書面で申し出ます。出す先は、今の受入れ機関、監理支援機関、または国(出入国在留管理庁長官と厚生労働大臣)のどれかです(育成就労法第8条の2)。申し出の具体的な書式と流れは、入管庁が「決まり次第お示しします」としている段階です。ハローワークも、監理支援機関や機構と連携して転籍を支えることになっています。
育成就労の日本語要件は?——働く前にA1、3年でA2

日本語の目安は、「日本語教育の参照枠」という共通のものさしで決まっています。A1がいちばん下で、A2、B1と上がります。入管庁の資料は、A1の試験の例としてJLPT(日本語能力試験)のN5、A2の例としてN4を挙げています。
- 働き始める前:A1相当以上の試験に合格。合格していなければ、認定日本語教育機関の「就労」課程のA1講習を100時間以上受ける
- 1年以内:A1相当の日本語の試験を受ける(技能の試験も受ける)
- 本人意向の転籍:多くの分野でA2.1相当以上(介護はA2.2相当以上)
- 3年で:A2相当以上の試験に合格(特定技能1号と同じ水準)
入国の時点で試験に受かっていないと来られない、というわけではありません。講習の費用は、受入れ機関か監理支援機関が負担を含めて手当てします。3年の間にA2講習を100時間以上受ける機会も、受入れ機関が用意する決まりです。ただし、その講習の時間を労働時間として扱う義務まではありません。
JLPTはいつでも受けられる試験ではなく、年2回(2026年は7月と12月)です。受験料と申し込みの時期は日本語能力試験(JLPT)の申し込み方で確かめて、転籍や移行の時期から逆算してください。
育成就労から特定技能への移行は?——試験の合格が条件
育成就労は、特定技能1号の手前の段階として作られています。3年で技能検定3級か特定技能1号評価試験などの技能試験と、日本語A2相当以上(JLPT N4など)の試験に受かれば、特定技能1号(通算5年)に進めます。
ここは技能実習と違います。今は技能実習2号を良好に終えた人は、特定技能1号の試験が免除されます。育成就労から特定技能1号へ進む人には、この免除がありません。
試験に落ちたときは、再受験のために最長1年、在留を続けることが認められます。法律も、省令で決める理由があれば計画を4年以内まで延ばせる形になっています。3年の途中で特定技能1号に移ることは、入管庁のQ&Aでは「認める方針」とされていて、条件の細部はまだ示されていません。
特定技能1号になったあとは、転籍制限期間はありません。特定技能は最初から職場を変えられる在留資格です。何が変わるかで手続が違い、入管への14日以内の届出も要ります。順番は特定技能の転職の手順で確かめてください。
今の技能実習生はどうなる?——技能実習のまま続ける(経過措置)
2027年4月1日の時点で日本にいて技能実習をしている人は、そのまま技能実習を続けられます。適用されるのは技能実習のルールで、途中から育成就労に切り替えることはできません。
| 2027年4月1日の時点で | このあと |
|---|---|
| 技能実習1号 | 計画の認定を受ければ2号へ進める |
| 技能実習2号で、2号を1年以上している | 3号へ進める |
| 技能実習2号で、2号が1年未満 | 3号へは進めない |
| まだ来日していない(3月31日までに計画の認定申請済み) | 原則6月30日までに実習を始めれば、技能実習生として入国できる場合がある |
| すでに実習を終えて帰国した | 技能実習生としては戻れない。育成就労なら来られる場合がある |
技能実習2号を良好に終えた人は、制度が始まったあとも当分の間、関連する仕事なら特定技能1号へ進めます。一方で、2年以上技能実習をした人が、別の分野で育成就労をやり直すことは基本的にできません。
育成就労にいくらかかる?——送出機関に払うのは月給2か月分まで
| 何に | 誰が・いくら |
|---|---|
| 母国の送出機関への費用 | 本人が払うのは月給(所定内の月額)の2か月分まで。超える分は受入れ機関か監理支援機関 |
| 日本語講習 | 受入れ機関か監理支援機関が、費用を含めて手当てする |
| 本人意向の転籍 | 転籍先が転籍元に一定額を払う。額を決める告示はこれから |
| 農業・漁業の季節の一時帰国の旅費 | 監理支援機関(単独型なら受入れ機関) |
入管庁は、この上限を「外国人が送出機関に支払う費用が不当に高額にならないようにする仕組み」と説明しています。育成就労の計画も、送出機関に払った額が基準に合っていなければ認定されません(育成就労法第9条第11号)。契約書にサインする前に、金額と内訳を書面でもらってください。
監理支援機関と外国人育成就労機構とは?
監理支援機関は、今の「監理団体」に当たる組織です。外国人と受入れ機関の雇用をつなぎ、育成就労が計画どおりに行われているかを監査し、外国人を支援・保護します。転籍の申し出があったときの連絡調整も担います。許可制で、今の監理団体もそのままでは続けられず、新しく許可を受け直す必要があります。許可の基準は厳しくなり、外部監査人を置くこと、常勤の役職員が2人以上いることなどが加わりました。
外国人育成就労機構は、今の外国人技能実習機構に当たる機関です。一人ひとりの育成就労計画を認定し、職場に実地検査に入ります。施行前の申請は、今は外国人技能実習機構が受け付けています。
ルールを破ったら・困ったら?——転籍は自分で勝手に決めない
本人意向の転籍は、条件を満たし、転籍先の計画が認定されて初めて成り立ちます。条件を満たさないまま職場を離れて別のところで働くのは、転籍ではありません。今の技能実習でも、実習先からいなくなった人の在留資格の取消しは多く、2025年に取り消された1,446件のうち973件が技能実習でした。数字と取消しの流れは在留資格の取消しの記事にあります。
暴力やパワハラなどの人権侵害を受けているなら、制限期間を待つ必要はありません。それは「やむを得ない事情」の転籍の話です。技能実習生は、外国人技能実習機構の母国語相談で、母国語を話す相談員に電話・メール・手紙で相談できます。給料や労働時間のことは、無料の労働相談の窓口でも受け付けています。
まだ決まっていないことは?
- 本人意向の転籍の申し出の具体的な書式と手順(入管庁「決まり次第お示しします」)
- 転籍先が転籍元に払う金額(告示は「今後制定する予定」)
- 3年の途中で特定技能1号に移るための条件(「認める方針」の段階)
- リネンサプライ・物流倉庫・資源循環の新しい分野の受入れ開始(告示の公布・施行後、準備が整い次第)
これらは、決まれば入管庁の「育成就労制度」のページと、Q&Aが更新されます。
終わりの判断——自分はどれか
- 今、技能実習生として日本にいる——自分は技能実習のまま続く。在留カードで今が何号かを確かめ、2号なら2027年4月1日に2号を1年以上しているかを数える。
- 2027年4月以降に育成就労で来る予定——送出機関に払う額が月給2か月分以内かを確かめ、JLPT N5かJFT-Basicの日程を調べる。
- 育成就労で働き始めてから職場を変えたい——自分の分野の転籍制限期間(1年か2年)を上の図で確かめ、その日までにA2.1の日本語試験と技能の試験を受ける計画を立てる。
- 職場で暴力・パワハラ・給料の未払いがある——期間を待たず、今日、母国語相談か労働相談の窓口に連絡する。
よくある質問(FAQ)
Q. 育成就労制度はいつから始まりますか?
2027年(令和9年)4月1日です。施行日を定める政令で決まっています。受入れ機関や監理支援機関の事前の申請は、2026年から始まっています。
Q. 育成就労と技能実習の違いは何ですか?
目的が違います。技能実習は技能を母国へ移す国際貢献、育成就労は人手不足分野での人材の育成と確保が目的です。育成就労では、本人の希望による転籍が条件つきで認められます。
Q. 育成就労で転籍できるのは何年目からですか?
分野ごとに1年か2年です。農業・漁業・宿泊など9分野は1年、介護・建設・外食業など8分野は2年です。同じ業務区分の中だけで、技能と日本語の試験の合格も必要です。
Q. 育成就労の日本語要件はどのくらいですか?
働き始める前にA1相当(JLPT N5など)、3年でA2相当(N4など)の合格が目標です。A1の試験に受かっていなくても、A1講習を100時間以上受ければ働き始められます。
Q. 今の技能実習生は育成就労に切り替わりますか?
切り替わりません。2027年4月1日に技能実習をしている人は、技能実習のルールのまま続けます。1号は2号へ、2号を1年以上している人は3号へ進めます。
Q. 育成就労から特定技能1号に移れますか?
移れます。技能の試験と日本語A2相当以上(JLPT N4など)の試験に受かることが条件です。技能実習2号を良好に終えた人のような試験の免除はありません。
まとめ
育成就労は、技能実習に代わって2027年4月1日に始まる制度です。目的は人手不足分野での人材の育成と確保で、期間は原則3年。本人の希望による転籍が、同じ業務区分の中で、分野ごとに1年か2年たってから、試験の合格を条件に認められます。
日本語は就労前にA1、3年でA2。特定技能1号へは試験の合格で進みます。今の技能実習生は技能実習のまま続き、切り替えはありません。転籍の手続の細部や費用の額など、まだ決まっていないこともあります。うわさではなく、入管庁のQ&Aの更新で確かめてください。
出典(公式):出入国在留管理庁「育成就労制度」/同「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」/同「育成就労制度Q&A」/同「育成就労制度の制度概要・関係法令」(施行期日を定める政令)/厚生労働省「外国人育成就労制度について」/e-Gov法令検索「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」。2026年9月23日に確認したものです。分野ごとの細かい条件は、受入れ機関か監理支援機関にも確かめてください。
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