最終更新:2026年8月31日
この記事の結論(Summary)
- ここでいう「社会保険」とは、勤務先で入る健康保険と厚生年金保険のことです。国民健康保険や国民年金とは別のものです。
- 学生アルバイトは、原則としてここに入りません。入口が2つあり、学生はどちらも通らない作りになっています。
- ニュースで聞く「106万円の壁」は、そのうちのひとつです。要件に「学生でないこと」が書かれているので、学生には来ません。
- もうひとつの入口は週30時間・月15日。留学生は週28時間が上限なので、ここにも届きません。
- 例外は4つ。休学中、定時制、通信制、卒業後も同じ会社で働く予定の人は「学生でない」扱いになります。
- 日本語学校の学生も「学生」に入ります。修業年限1年以上の各種学校が対象だからです。
- 引かれないかわりに、国民健康保険料と国民年金保険料は自分で払います。どちらも下げる手続きがあります。
給与明細を日本人の友達と見せ合ったら、引かれているものが違った。向こうは「健康保険」と「厚生年金」が引かれていて、自分は所得税だけ。手続きを忘れているのではないか、あとでまとめて請求が来るのではないか——そう思って調べる人がいます。
忘れているのではありません。制度がそうなっています。
学生アルバイトと社会保険とは?——勤務先で入る保険の話
日本には、健康保険が2つの系統あります。
- 勤務先の健康保険・厚生年金保険……会社が半分払い、残りが給与から引かれる。この記事で「社会保険」と呼ぶのはこちら
- 国民健康保険・国民年金……自分で市区町村に払う。学生や自営業の人が入る
どちらか一方に入ります。両方ではありません。そして学生アルバイトは、ふつう下の側にいます。
勤務先の社会保険に入る入口は2つあります。日本年金機構が両方を公表していて、学生はどちらも通らないようになっています。

106万円の壁は、学生には来ません
まず、よく話題になるほうから。従業員51人以上の会社などで働く短時間労働者は、次の3つをすべて満たすと社会保険に入ります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 学生でないこと
3つ目に注目してください。月8.8万円は年に直すと105.6万円で、これが「106万円の壁」(「106万の壁」とも書かれます)と呼ばれているものです。その壁は、学生には最初から立っていません。週20時間を超えて働いても、月8.8万円を超えても、学生であるかぎりこの入口は開きません。
なお、この対象になる会社の規模は令和9年10月から36人以上に広がります。学生の扱いは変わりません。
もうひとつの入口は、週30時間です
もうひとつは古いほうの基準で、こちらは学生も通ります。日本年金機構はこう説明しています。
以下の1および2が一般社員の4分の3以上である場合は、被保険者になります。(1)1週の所定労働時間が一般社員の4分の3以上(2)1月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上。(例)一般社員の1週の所定労働時間が40時間で、1月の所定労働日数が20日である場合、週の所定労働時間40時間×4分の3以上=30時間以上、1月の所定労働日数20日×4分の3以上=15日以上
日本年金機構「私は、パートタイマーとして勤務しています。社会保険に加入する義務はありますか。」
年金機構は別のQ&Aで、学生であってもこの基準を満たせば一般被保険者になると明記しています。学生だから入らない、ではありません。
ただし留学生には週28時間の上限があります。30時間には届きません。28時間の上限がある限り、この入口も通らないということです。資格外活動許可の枠が、そのまま社会保険の枠にもなっています。
「学生でない」扱いになる4つの場合
例外があります。年金機構は、次の人は学生でも社会保険の対象になると書いています。
- 卒業した後も引き続き同じ会社で働くことが決まっている人
- 休学中の人
- 定時制課程に在学する人
- 通信制課程に在学する人(いわゆる社会人大学院生なども同じ)
ここで効くのは休学です。体調を崩して1年休む、家の事情でいったん止める。そのあいだアルバイトを続けていると、会社の規模と働き方によっては社会保険に入ることになります。手取りが変わるので、休学届を出すときに勤務先にも伝えてください。
卒業予定で内定先に入る人も同じです。3月まで学生でも、そのまま同じ会社で働くなら「学生でない」扱いになります。
日本語学校の学生も「学生」に入ります
ここは誤解が多いところです。年金機構が挙げている「学生」は、高校・中等教育学校・特別支援学校・大学(大学院を含む)・短期大学・高等専門学校・専修学校、そして修業年限が1年以上の各種学校です。
日本語学校の多くは各種学校で、修業年限は1年以上あります。だから対象に入ります。年金機構は「具体的な対象校は学生納付特例対象校一覧に掲載されている学校と同一」と書いていて、その一覧には外国の大学の教育施設を含む別表まであります。
自分の学校が入っているかどうかは、国民年金の学生納付特例が使えるかどうかと同じです。学校の事務室で聞けば分かります。
手取りはどうなるか——引かれないかわりに、自分で払う
社会保険に入らないので、給与から健康保険料も厚生年金保険料も引かれません。同じ額を稼ぐ社会人より、手取りの割合は高くなります。
そのかわり、保険と年金は自分で払います。ここが見落とされます。

そして、その2つにはどちらも下げる手続きがあります。
- 国民健康保険料の軽減……前年の所得が低ければ7割・5割・2割引き。東京23区なら年65,200円が19,560円まで下がります
- 国民年金の学生納付特例……月17,920円の支払いを在学中は猶予できます
両方を使うと、社会保険にかかるお金は月1,630円まで下がります。どちらも申請しないと始まりません。入らないから安い、のではありません。手続きをするから安くなります。
卒業して就職したら、ここが変わります
就職すると社会保険に入ります。健康保険料と厚生年金保険料が給与から引かれるので、額面から手取りへの落ち方が学生時代より大きくなります。
それでも収入そのものが上がります。就職と給料の記事で見たとおり、技術・人文知識・国際業務の平均月給は313,200円で、学生の上限137,312円との差は年約211万円です。引かれる額が増えても、残る額はずっと大きくなります。
厚生年金は、帰るときにも意味を持ちます。払った分の一部は脱退一時金として請求できます。
終わりの判断——今日確かめること
この記事でやることは3つだけです。
- 給与明細を見て、健康保険料と厚生年金保険料が引かれていないことを確かめる。引かれていないのが正常です
- 引かれているなら、週30時間以上・月15日以上働いていないか確かめる。留学生ならその時点で28時間の上限を超えています
- 国民健康保険料の軽減と、国民年金の学生納付特例。この2つを申請しているか確かめる
1が正常で3が済んでいれば、この話は終わりです。休学するとき、卒業して就職するときに、もう一度だけ読み返してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 留学生は社会保険が免除されるのですか。
免除ではありません。学生は勤務先の社会保険の対象から外れている、という設計です。かわりに国民健康保険と国民年金に入り、自分で払います。免除に近いのは学生納付特例のほうで、こちらは国民年金の支払いを在学中猶予する制度です。
Q. 106万円を超えて働くと、社会保険に入りますか。
学生は入りません。月額8.8万円という要件は、短時間労働者の適用拡大の3つの条件のひとつで、そこには「学生でないこと」も並んでいます。学生であるかぎり、この入口は開きません。
Q. 日本語学校の学生も「学生」に入りますか。
入ります。修業年限が1年以上の各種学校が対象で、日本語学校の多くがこれに当たります。年金機構は、具体的な対象校は学生納付特例の対象校一覧と同じだと書いています。
Q. 休学したらどうなりますか。
「学生でない」扱いになります。従業員51人以上の会社などで週20時間以上働き、月額8.8万円以上を受けていれば、社会保険に入ることになります。手取りが変わるので、休学を決めたら勤務先にも伝えてください。
Q. 社会保険に入ったほうが得ですか。
働ける時間に上限がある留学中は、選べません。28時間の上限がある限り週30時間には届かず、短時間労働者の入口は学生であることで閉じています。選べるようになるのは、卒業して就職してからです。
Q. 雇用保険はどうなりますか。
社会保険とは別の制度です。昼間学生は原則として雇用保険の被保険者になりません。この記事で扱っているのは健康保険と厚生年金保険の話です。
まとめ
- ここでいう社会保険は、勤務先で入る健康保険と厚生年金保険のこと。国民健康保険・国民年金とは別
- 入口は2つあり、学生アルバイトはどちらも通らない
- 106万円の壁(週20時間・月8.8万円)の要件には「学生でないこと」が入っている
- もうひとつの入口は週30時間・月15日。留学生は28時間が上限なので届かない
- 例外は、卒業後も同じ会社で働く人・休学中・定時制・通信制の4つ
- 日本語学校の学生も「学生」に入る(修業年限1年以上の各種学校)
- 引かれないかわりに国保と国民年金を自分で払う。軽減と学生納付特例で月1,630円まで下がる
- 就職すると引かれ始めるが、収入の差のほうが大きい
参照:日本年金機構「パートタイマーの社会保険加入義務」/同「学生は4分の3基準に該当していても被保険者とならないのか」/同「短時間労働者の要件にある『学生』とは」/同「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
役に立ったら、友達にも教えてください
Found this useful? Share it with a friend who lives in Japan.
ほかのことを探していますか

