この記事は2026年10月29日に、宅地建物取引業法と施行規則・民法(e-Gov)、国土交通省の報酬の告示と「部屋探しガイドブック」と宅建業者の検索システム、首都圏不動産公正取引協議会の表示規約と違反事例、埼玉県警察の詐欺の注意、預金保険機構の振り込め詐欺救済法のページで確かめて書いています。
先に結論
- 部屋を見る前や、重要事項説明を受ける前に「先にお金を振り込んで」と言われたら、払いません。日本の正しい流れでは、下見→申込み→審査→重要事項説明→契約書に署名、の順で、敷金・礼金・仲介手数料を払うのは最後です。
- 賃貸の詐欺やトラブルの型は5つあります。おとり物件、SNSの偽の大家・仲介、先にお金だけ取る話、今の住人からの又貸し、免許の無い業者です。
- 払う前に確かめるのは7つです。部屋を見たか、業者の免許番号が国土交通省の検索で出るか、宅地建物取引士から重要事項説明を受けたか、振込先の名義が契約の相手と同じか、申込金が戻るか、仲介手数料が上限内か、相手が大家の承諾を持っているか、です。
- 仲介手数料の上限は、借りる人と大家から受ける合計で家賃の1か月分+消費税です(長く空き家だった部屋は、大家側の分が増える特例があります)。借りる人だけからは、前もって承諾していなければ家賃の0.5か月分+消費税です。
- もう振り込んだなら、すぐに振込先の銀行と警察に連絡します。口座が止められれば、そのときの残高を上限に分けて戻る仕組みがあります。相談は#9110・188・法テラス(0570-078377)です。
これが分かると、「先にお金を」と言われたその場で、払ってよい話かどうかを自分で判断でき、払う前に引き返せます。

来日して3か月。寮を出る日が近づいて、SNSの部屋の募集で、駅から5分で家賃4万円の部屋を見つけました。メッセージを送ると、「大家は海外にいる。人気だから、先に敷金と1か月分を振り込めば押さえておく。鍵は郵送する」と返ってきます。振込先は、個人の名前の口座です。日本人の友達に見せると、「日本では、部屋を見る前に大家に直接お金を送ることはまず無いよ」と言われました。
日本の賃貸の詐欺・トラブルにはどんな型がある?——おとり物件・偽の大家・前払い・又貸し・無免許

部屋探しのトラブルには、お金をだまし取る詐欺と、法律に反する広告や貸し方があります。どちらも、払う前に気づけば防げます。気をつけたい型は5つです。
- おとり物件:もう借りられない部屋や、存在しない部屋の広告です。問い合わせると「その部屋は決まった。ほかの部屋なら」と別の部屋をすすめられます。
- SNSの偽の大家・仲介:SNSや掲示板で大家や仲介を名乗り、部屋を見せる前に、敷金や家賃を個人の口座へ振り込ませる手口です。
- 先にお金だけ取る話:「予約金」「紹介料」「キャンセル待ちの登録料」などの名前で、契約の前にお金だけを払わせ、そのあと連絡が取れなくなる手口です。
- 又貸し:今住んでいる人が、大家の承諾なしに部屋を貸す話です。帰国する人の「部屋を引き継いで」もこれに当たることがあります。
- 免許の無い業者:宅地建物取引業の免許を持たずに仲介し、手数料を取ります。
おとり物件には、業界団体が違約金を課した例があります。首都圏不動産公正取引協議会の業界の規約は、おとり広告を3つに分けて禁止しています。存在しない物件、存在するが取引できない物件、存在するが取引する意思のない物件です(不動産の表示に関する公正競争規約21条)。2026年9月には、ある会社が賃貸マンション8件の広告で、協議会から違約金を課されました。契約済みになったあとも1か月以上、長いものは3か月以上、入居済みになったあとも24日から2か月以上、広告を出し続けていました(首都圏不動産公正取引協議会「2026年9月度の措置」)。
又貸しは、借りる側にも危険があります。民法は、借りている人が大家の承諾なしに部屋を貸すことを禁じています。承諾のない又貸しが分かると、大家は元の契約を解除できます(民法612条(e-Gov))。そうなると、お金を払ったあなたが住み続けられなくなるおそれがあります。
免許の無い仲介は、法律で禁止されています。宅地建物取引業法は、免許を受けない人が宅地建物取引業を営むことも、営むと表示したり広告したりすることも禁じています。免許なしに営むと3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金(両方のこともあります)、営むと表示や広告をしただけでも100万円以下の罰金です(宅地建物取引業法12条・79条・82条(e-Gov))。
日本の部屋探しの正しい流れは?——お金を払うのは重要事項説明のあと

部屋を見ないまま、知らない人にお金を送って部屋を押さえる。あなたの国では、それで済むこともあるかもしれません。日本では、それは普通の流れではありません。
国土交通省の「部屋探しガイドブック」は、日本で部屋を借りる流れを次の順で説明しています(国土交通省「部屋探しガイドブック」)。
- インターネットの不動産情報サイトなどで部屋を探す
- 不動産店に連絡するか、行く
- 部屋の下見に行く
- 入居申込書に記入する
- 不動産店と大家による審査
- 重要事項説明で、契約の内容の説明を受ける
- 契約書に署名して、敷金・礼金・媒介手数料・損害保険料・家賃・共益費などを払う
- 鍵を受け取り、引っ越す
同じガイドブックは、「下見は無料です」と書いています。部屋を見て気に入らなければ、申し込まなくてかまいません。契約のお金を払うのは、重要事項説明を受けて契約書に署名するときです。部屋を見る前や、説明を受ける前に、敷金や家賃を振り込むよう急がされたら、この順番から外れています。
申込みのときに、申込金を不動産店に預けることはあります。そのときは、契約しなかったら返ってくるかを確かめます。ガイドブックも、申込金が戻ってくるかを確認するよう書いています。初期費用の内訳と、敷金・礼金がそれぞれ何のお金かは、日本の賃貸契約のしくみ(初期費用・保証会社・敷金礼金)で確かめられます。
お金を払う前に確かめる7つは?——免許・説明・振込先・返金

払う前に、次の7つを確かめます。1つでも確かめられないなら、その日は払いません。
- 部屋を自分の目で見たか。下見は無料です。遠くて行けないなら、日本にいる知り合いに見てもらうか、ビデオ通話で部屋の中を見せてもらいます。「下見はできないが、先に払えば押さえる」と言われたら、そこで止まります。
- 業者の免許番号が、国の検索で出るか。不動産の仲介をする会社は、宅地建物取引業の免許を持っています。広告や名刺の免許番号と会社名を、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで調べます。会社名で探しても出ないなら、その会社に仲介を任せません。大家が自分の部屋を自分で貸すときは、免許は要りません(宅地建物取引業法2条)。その場合は、管理会社などに問い合わせて、相手が本当にその部屋の大家かを確かめます。
- 重要事項説明を受けたか。宅地建物取引業法は、契約が成立するまでに、宅地建物取引士が書面を渡して重要事項を説明するよう決めています。説明するときは、宅地建物取引士証を見せなければなりません(宅地建物取引業法35条(e-Gov))。これは不動産会社が間に入るときの決まりです。説明の無いまま「お金だけ先に」は、この順番ではありません。
- 振込先の名義は、契約の相手と同じか。振込先の名義が、契約書にある大家か不動産会社の名前と同じかを確かめます。違うなら、払う前に理由を聞きます。警察は投資詐欺について、振込先に個人の名前の口座を指定されたり、振り込むたびに口座が変わったりしたら、詐欺を疑ってすぐ相談するよう呼びかけています(埼玉県警察「SNS型投資詐欺に注意!!」)。
- 申込金は、契約しなければ戻るか。宅地建物取引業法の施行規則は、申込みを撤回した(取りやめた)人に、不動産会社(宅地建物取引業者)が預かったお金を返すのを拒むことを禁じています(宅地建物取引業法施行規則16条の11第2号(e-Gov))。免許の無い相手には、この決まりは届きません。預ける前に、戻ることを書面かメールで残してもらいます。
- 仲介手数料は、上限の内か。上限は次の章で数字にしています。
- 相手は大家か、大家から任された業者か。今住んでいる人から「部屋を引き継いで」と言われたら、大家か管理会社に直接連絡し、あなたの名前で新しく契約できるかを確かめます。
友達や同じ国の人からの紹介でも、7つは同じです。紹介した人に悪気がなくても、その先の相手が本物とは限りません。確かめられないことが1つでもあるなら、払わないのが一番安い判断です。
仲介手数料はいくらまで?——家賃1か月分+消費税が上限

仲介手数料の上限は、国土交通大臣が決めて告示しています。不動産会社は、それを超えて受け取れません。事務所には、その額を掲示しなければなりません(宅地建物取引業法46条)。
- 借りる人と大家から受ける合計:家賃の1か月分の1.1倍まで(家賃1か月分+消費税10%)
- 住むための部屋で、借りる人だけから受ける額:前もって承諾していなければ、家賃の1か月分の0.55倍まで(家賃0.5か月分+消費税)
家賃5万円なら、合計の上限は55,000円です。前もって承諾していなければ、借りる人が払うのは27,500円までです(報酬の告示の本文(大阪府の掲載))。仲介手数料として家賃1か月分を求められたら、いつ承諾したことになっているのかを、署名する前に聞きます。
長く空き家だった部屋(長期の空家等)には特例があり、不動産会社は大家から受ける分を増やして、合計で家賃2か月分+消費税まで受けられます。この特例でも、借りる人が払う上限は変わりません。
「紹介料」「事務手数料」「書類作成料」など、別の名前で手数料を足されることもあります。何のお金で、誰に払うのかを、書面で出してもらいます。説明できないお金は払いません。
もう払ってしまったら?——銀行と警察にすぐ連絡

払ってしまったと気づいたら、恥ずかしがらずに、その日のうちに動きます。
- もう払わない。「手続きの手数料」「鍵の送料」など、追加の請求には応じません。
- 振込先の銀行に連絡する。振込で払ったなら、振込先の口座がある銀行に、詐欺にあったかもしれないと伝えます。預金保険機構は、すぐに警察や振込先の銀行に連絡して、振り込んだ口座の取引を止めるよう頼むことを案内しています。振り込め詐欺救済法は、預金口座への振込を使った詐欺などの被害を回復するための法律です(預金保険機構「振り込め詐欺救済法に基づく公告」)。口座が止められると、止まったときの残高を上限に、申請した被害者へ分けて支払われます。全額が戻るとは限りません(預金保険機構「よくある質問」)。
- 警察に相談する。今まさにお金を取られそうなら110番、相談なら#9110です。#9110は全国共通で、かけた場所の警察本部の相談窓口につながります(政府広報オンライン「暮らしの相談窓口」)。
- やり取りを残す。メッセージ、広告の画面、相手のアカウント名、振込の記録をスクリーンショットで残します。相手が消してしまう前に撮ります。
- 相談窓口に電話する。消費者ホットライン188は、近くの消費生活センターを案内してくれます(消費者庁「消費者ホットライン」)。日本語に不安があれば、法テラスの多言語情報提供サービス(0570-078377、平日9時〜17時)が通訳つきで相談先を教えてくれます(法テラス「多言語情報提供サービス」)。
警察への電話のかけ方と、英語で話せるかは、110番のかけ方(英語も通訳つき・相談は#9110)で確かめられます。
安全に部屋を探すには?——免許のある店と、外国人を受け入れる部屋から
詐欺にあわない一番の近道は、最初から免許のある不動産店を通すことです。国土交通省のガイドブックは、インターネットの不動産情報サイトか、まちの不動産店で探す方法をすすめています。外国人の入居を受け入れる賃貸住宅は、「セーフティネット住宅情報提供システム」でも探せます。留学生なら、大学などの学生担当の窓口に、部屋の情報があるか聞く方法もあります。
日本語の不動産サイトの読み方と、英語で探せる方法は、外国人の部屋探し(SUUMOに英語版は無い・日本語なしで探す方法)にまとめています。保証人がいなくて、知らない人の「保証人なしで貸す」に心が動いたときは、先に保証人なしで借りられる3つの道を確かめます。
終わりの判断——自分はどれか
- これからお金を払うところ——7つを確かめる。今日、業者の免許番号を国土交通省の検索で調べ、振込先の名義が契約の相手と同じかを見る。
- 「下見の前に払えば押さえる」と言われている——払わない。今日、その相手とのやり取りを止め、免許のある不動産店で同じ地域の部屋を探す。
- 今の住人から部屋を引き継ぐ話がある——大家に確かめる。今日、管理会社か大家に連絡し、あなたの名前で契約できるかを聞く。
- 申込金を払ったが、やめたい——返金を求める。今日、申込みを取り消すことをメールで伝え、預けたお金を返すよう書いて残す。
- もう振り込んでしまった——すぐ動く。今日、振込先の銀行と警察(#9110)に連絡し、やり取りのスクリーンショットを残す。
払う前に7つがそろったか、払ってしまったお金について銀行と警察に連絡し終えたら、この判断は終わりです。
よくある質問(FAQ)
Q. 部屋を見る前に、敷金や家賃を振り込んでも大丈夫ですか?
払いません。国土交通省のガイドブックでは、下見は無料で、敷金・礼金・仲介手数料などを払うのは重要事項説明を受けて契約書に署名するときです。下見の前に個人の口座への振込を求められたら、詐欺を疑います。
Q. おとり物件とは何ですか?
実際には借りられない部屋の広告です。不動産の業界の規約は、存在しない物件、存在するが取引できない物件、取引する意思がない物件の広告を禁じています。2026年9月にも、契約済みの部屋を1か月以上、入居済みの部屋を24日以上載せ続けた会社に、業界団体が違約金を課しました。
Q. 不動産会社が本物か、どう確かめますか?
広告や名刺にある免許番号と会社名を、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で調べます。重要事項説明のときに宅地建物取引士証を見せてもらうことも、法律で決まっています。
Q. 仲介手数料はいくらまでですか?
借りる人と大家から受ける合計で、家賃1か月分+消費税までです(長く空き家だった部屋は、大家側の分が増える特例があります)。住むための部屋で借りる人だけから受けるのは、前もって承諾していなければ家賃0.5か月分+消費税までです。家賃5万円なら27,500円です。
Q. 帰国する人から部屋を引き継いでもいいですか?
大家か管理会社の承諾が要ります。民法は、承諾のない又貸しを禁じていて、分かると大家は元の契約を解除できます。大家に連絡し、あなたの名前で新しく契約できるかを確かめます。
Q. お金をだまし取られたら、戻りますか?
全額が戻るとは限りません。振込なら、すぐに振込先の銀行と警察に連絡します。口座が止められれば、振り込め詐欺救済法の手続きで、止まったときの残高を上限に、申請した被害者へ分けて支払われます。相談は#9110・188・法テラス(0570-078377)です。
まとめ
日本の部屋探しでは、下見、申込み、審査、重要事項説明のあとに、契約書に署名して敷金・礼金・仲介手数料を払います。部屋を見る前や説明を受ける前に、個人の口座へ振り込むよう急がされたら、この順番から外れています。払う前に、部屋を見たか、免許番号が国の検索で出るか、重要事項説明を受けたか、振込先の名義が契約の相手と同じか、申込金が戻るか、仲介手数料が上限内か、相手が大家の承諾を持っているかを確かめます。
仲介手数料の上限は、合計で家賃1か月分+消費税、借りる人だけからは承諾がなければ0.5か月分+消費税です。もう振り込んだなら、その日のうちに振込先の銀行と警察に連絡し、やり取りを残します。
出典(公式):宅地建物取引業法・同施行規則・民法(e-Gov)/国土交通省 部屋探しガイドブック・宅建業者の検索/報酬の告示(大阪府の掲載)/首都圏不動産公正取引協議会 2026年9月度の措置/埼玉県警察/預金保険機構/政府広報オンライン/消費者庁/法テラス(2026年10月29日確認)
あわせて読みたい
役に立ったら、友達にも教えてください
Found this useful? Share it with a friend who lives in Japan.
ほかのことを探していますか
この記事の図は、出典としてリンクを付ければ、商用でも自由に使えます。図の使い方
