日本でアルバイトをしている外国人留学生にとって、「税金(ぜいきん)」は避けて通れないテーマです。
給料から自動的に差し引かれる「所得税(しょとくぜい)」、1年間の働き方に応じて必要になる「年末調整(ねんまつちょうせい)」や「確定申告(かくていしんこく)」など、日本人学生と同じようにルールを守る必要があります。
しかし、税金の仕組みを正しく理解していないと、「思ったよりお金が減ってしまった」「書類を出し忘れて損をした」といったトラブルが起きやすくなります。逆に、仕組みを知っておけば「払いすぎた分が戻ってくる」「余計な負担を避けられる」といったメリットもあります。
この記事では、外国人留学生がアルバイトをするときに知っておくべき税金の基本を整理しました。
1. 所得税(しょとくぜい)とは?
まず最初に知っておくべきは「所得税(しょとくぜい)」です。これは国に納める税金で、アルバイトでも必ず関わります。
● 給料から自動で引かれる仕組み
日本で働くと、給料をもらうときに「源泉徴収(げんせんちょうしゅう)」と呼ばれる仕組みで、所得税が自動的に差し引かれます。アルバイトの場合、毎月数百円〜数千円が天引き(てんびき=自動で引かれること)されるのが一般的です。
● 所得税の計算
所得税は、年間の収入に応じて計算されます。アルバイトの収入が少ない場合は、それほど大きな金額にはなりません。
ただし、最初に引かれる額は「仮の計算」に基づいているため、実際に払いすぎていた場合は後で戻ってくる仕組みになっています。
● よくある誤解
「税金を払わないと在留資格がなくなるのでは?」と不安に思う留学生もいます。結論から言えば、アルバイトで少額の所得税を払うのは当然のことですし、正しく手続きをしていれば問題はありません。むしろ払わないことが違反になるので注意しましょう。
2. 住民税(じゅうみんぜい)とは?
次に重要なのが「住民税(じゅうみんぜい)」です。これは国ではなく「市区町村」に納める地域の税金です。
● 住民税がかかる条件
住民税は「その年の1月1日時点で日本に住所があり、前年の収入が一定額を超える人」に課されます。
つまり、日本に来てすぐの留学生や、アルバイト収入が少ない留学生は、最初の1年目には基本的に住民税はかかりません。
翌年以降、前年のアルバイト収入が一定額を超えると、市区町村から「住民税の納付書(のうふしょ)」が届きます。収入が少なければ非課税(ひかぜい)になることも多いです。
● 扶養(ふよう)について
日本には「扶養(ふよう)」という制度があります。家族に養ってもらっている場合、税金が軽くなる仕組みです。
ただし、多くの留学生は日本に一人で来ているため、この制度はあまり関係ないケースが多いでしょう。ここでは「知識として知っておく程度」で十分です。
● 注意点
市役所から届く「納税通知書(のうぜい つうちしょ)」は放置してはいけません。期限までに支払わないと延滞金(えんたいきん)がかかることがあります。もし「よく分からない」と思ったら、学校の先生や日本人の友人に相談するのがおすすめです。
3. 年末調整(ねんまつちょうせい)とは?
アルバイト先が1か所だけの場合は、年末に「年末調整」という仕組みで1年間の税金が自動的に精算されます。
● 何をするのか?
年末調整では、以下のような情報をアルバイト先に提出します。
- 源泉徴収票(げんせん ちょうしゅうひょう)
- 扶養控除等申告書(ふよう こうじょ とう しんこくしょ)
- 保険料控除(ほけんりょう こうじょ)に関する情報(ある人のみ)
これをもとに会社が計算してくれるため、自分で難しいことを考える必要はありません。
● 戻ってくるお金
もし1年間で「引かれすぎていた税金」があれば、年末調整によって翌年1月の給料と一緒に払い戻されます。これを「還付金(かんぷきん)」と呼びます。
4. 掛け持ちしている人は確定申告(かくていしんこく)
アルバイトを2つ以上している場合、年末調整では税金を正しく精算できません。その場合、自分で「確定申告」をする必要があります。
● 確定申告の時期
毎年2月16日〜3月15日ごろに行います。この期間に申告しないと、追徴課税(ついちょうかぜい=追加で税金がかかること)や延滞金の対象になることもあるので注意しましょう。
● 必要な書類
- 各アルバイト先からもらう源泉徴収票
- 在留カード
- 印鑑(いんかん)
- 銀行口座番号(還付を受ける場合に必要)
● 税務署の場所を調べる方法
自分の住所を管轄する税務署に行く必要があります。調べ方はとても簡単で、インターネットで 「住んでいる市+税務署」 と検索すればOKです。
ただし、税務署は外国語対応が十分でない場合が多いので、日本語が不安な人は学校の先生や日本人の友人に同行してもらうと安心です。
5. 税金は何に使われている?
「どうせ取られるなら、何に使われているのか知りたい」と思う人も多いでしょう。
日本の税金は、次のようなことに使われています。
- 学校、図書館、道路、公園など公共施設の整備や維持
- 医療や福祉(病院、年金、保険制度)
- 消防・警察・防災対策などの安全を守る仕組み
- 子育て支援や教育制度
つまり、留学生の皆さんが安心して暮らし、学び、アルバイトできる環境を整えるために役立っているのです。
FAQ(アルバイトをしている外国人留学生向け)
Q1. アルバイトの給料が月5万円以下でも税金はかかりますか?
→ 所得税(しょとくぜい)はかかる場合がありますが、金額はとても少ないです。年間収入が一定以下の場合、年末調整(ねんまつちょうせい)や確定申告(かくていしんこく)で払いすぎた分が戻ってきます。
Q2. 住民税(じゅうみんぜい)はいつからかかるのですか?
→ 日本に住んで2年目以降、前年の収入が一定額を超えた場合にかかります。最初の1年目は原則として非課税(ひかぜい)です。
Q3. 確定申告は難しいですか?
→ 書類は少し複雑ですが、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面に沿って入力するだけで完了します。日本語に不安がある場合は、学校の先生や日本人の友人にサポートをお願いすると安心です。
Q4. アルバイトを2つしていても、片方で年末調整してもらえば大丈夫ですか?
→ いいえ。掛け持ちしている場合は年末調整では不完全です。必ず自分で確定申告を行う必要があります。
Q5. 税務署の場所が分かりません。どうすればいいですか?
→ インターネットで 「住んでいる市+税務署」 と検索すれば、最寄りの税務署がすぐに分かります。公式サイトには地図や受付時間も掲載されています。
Q6. 税金を払わないとビザ(在留資格)に影響しますか?
→ はい。納税は在留資格の更新にも関係します。税金を滞納すると更新が難しくなる場合があるため、必ず期限内に支払いましょう。
Q7. 扶養(ふよう)控除は関係ありますか?
→ 多くの留学生は日本に一人で来ているため、基本的には関係ありません。ただし、日本で家族と一緒に住んでいる場合や、仕送りをしている場合は関わるケースがあります。
まとめ
- アルバイトでも所得税は給料から引かれる
- 住民税は2年目以降や収入が多い場合にかかる
- アルバイト先が1つなら「年末調整」で自動精算
- 掛け持ちしている人は「確定申告」が必要
- 税金は日本の社会や生活を支えるために使われている
税金の仕組みを理解していれば、不安なくアルバイトを続けられます。もし分からないことがあれば、学校、市役所、税務署に相談してください。そして、この記事をぜひ友達や後輩にシェアして、みんなで知識を共有しましょう。
参考資料
- 法務省 出入国在留管理庁
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー」
- 総務省「税金の使いみち」
- 各市区町村 税務課
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