日本でアパートやマンションを借りると、退去(たいきょ)するときに「退去費用(たいきょひよう)」を請求されることがあります。
しかし、この退去費用は 本当に必要なものと、不必要なものが混ざっている 場合があります。特に外国人留学生は、日本のルールを知らないことで、本来払う必要のないお金まで払ってしまうことがあります。
この記事では、外国人留学生が安心して日本の賃貸住宅を利用できるように、退去費用の基本知識、トラブルが起こる理由、費用を安くするためのポイント、手続きの注意点などを分かりやすく解説します。
📌 翻訳ページもありますが、このページは 日本語能力試験N2〜N3レベル を意識して書いています。日本語の勉強にもなるので、ぜひ日本語でも読んでみてください。翻訳ページを先に読んでから日本語ページを読むと、理解が深まり、日本語学習にもつながります。
1. 退去費用とは? 原状回復の正しい知識
🌏 留学生向けにわかりやすく
日本でアパートやマンションを借りて住むと、退去するときに「退去費用(たいきょひよう)」がかかる場合があります。
これは、自分が生活の中でつけた傷や汚れを直すためのお金です。
ただし、誤解してはいけないのは、入居したときの新品の状態に全部戻す必要はないということです。
普通に生活して出る汚れ(壁の色あせ、床のすり傷など)は、入居者ではなく大家さん(オーナー)が負担します。
あなたが払うのは、タバコのヤニや焦げ跡、壊してしまったドアなど、自分の過失(かしつ)でつけたダメージだけです。
👉 ポイントは、「普通に住んで出る汚れは無料、壊したものだけ有料」ということです。
📖 専門的な解説
退去費用とは、「退去時に自分の過失で発生した傷みや汚れを元に戻して返す費用」であり、原状回復費用のことを指します。
多くの人が誤解しがちなのは、「借りた当時の状態に戻す=新品にする」という考え方ですが、これは誤りです。
【正しい原状回復の定義】
普通に生活して発生する傷みや汚れ以外の消耗を、現在の価値まで復旧することです。
- 自然損耗(しぜんそんもう):生活していれば当然発生する劣化(例:壁紙の日焼け、家具の跡、経年劣化) → 家賃に含まれているので大家が負担
- 故意・過失による損耗:入居者の不注意で起こした破損や汚れ(例:タバコのヤニ、飲み物をこぼして床がシミになった) → 入居者が負担
つまり、退去費用の対象になるのは「故意または過失による損耗」のみであり、自然損耗や経年劣化の修繕費用を入居者に請求するのは不当です。
2. なぜ退去費用でトラブルが多いのか?
🌏 留学生向けにわかりやすく
日本では、アパートやマンションを出るときに「思ったより高いお金を請求された」というトラブルがよくあります。
その理由は、大家さんや不動産会社と入居者のあいだに「知識の差」があるからです。
留学生は特に日本語や法律の知識が少ないので、業者に言われたことをそのまま受け入れてしまいがちです。
そのため、本来払わなくてもいいお金を払ってしまうケースが少なくありません。
📖 専門的な解説
不動産業界では「情報格差」を利用して、退去費用を過剰に請求するケースが多発しています。
業界の構造
- オーナー(大家) 自分の物件をきれいに保ちたいと考え、リフォーム費用を入居者に負担させたいと考えることがある。
- 管理会社・仲介業者 家賃の管理手数料は約5%前後と低いため、利益を確保するために「退去費用」で儲けようとする構造がある。
悪質な事例
- 小さな傷でも「全面リフォームが必要」と主張して高額請求する
- 実際の相場より高い金額でクリーニングを請求し、キックバックを受け取る
- ワンルーム退去で 30万円〜40万円 請求される事例も存在
👉 つまり、「入居者は知識がなく、反論しにくい」という弱点を利用しているのです。
特に留学生はターゲットにされやすいので注意が必要です。
3. 退去費用を安くできる5つの知識
退去費用をできるだけ安くするためには、「どこまでが入居者の責任か」 を正しく理解することが大切です。ここでは特に留学生が知っておくべきポイントを5つに整理しました。
① 原状回復は「借りた当時の新品状態に戻すこと」ではない
多くの人が誤解しているのが「入居したときと同じ新品状態に戻さなければならない」という考え方です。
正しいルールはこうです:
- 普通の生活で自然についた汚れ(経年劣化)は大家さんの負担。
- 故意や過失で壊したものだけが入居者の負担。
例:
- 壁紙が日焼けで黄色くなる → 自然損耗(入居者は払わなくていい)
- 物をぶつけて壁に穴をあけた → 過失(入居者が負担する)
② 故意・過失でも「新品の値段」を払う必要はない
例えば、新品10万円の壁紙を壊してしまった場合でも、6年経っていれば価値はほとんど残っていません。
この「残っている価値(残存価格)」だけを払えばいいのです。
👉 ポイント:
- 6年を過ぎた壁紙 → 残存価値は1円(ほぼ請求されない)
- 床や設備も減価償却(年数による価値の減少)が考慮される
③ 壊した部分だけ直せばよい
よくあるトラブルは「一部を壊したのに全面交換を請求される」ことです。
正しいルール:
- フローリング → 1枚だけ交換すればOK
- 壁紙 → 最大でも1面までが入居者の負担
全面リフォームは原則不要です。
④ 火災保険で修理できることもある
入居するときに火災保険に入るのが一般的ですが、その補償内容に「借家人賠償責任保険」や「破損・汚損」が含まれていることがあります。
これを使えば、退去時に高額請求されそうな修繕費をカバーできる可能性があります。
例:
- 子どもが壁に落書きをした
- 誤って洗面台を割ってしまった
👉 注意:
火災保険は退去後には使えません。壊した時点で申請することが大事です。
⑤ 特約に書いてあっても無効な場合がある
契約書に「ハウスクリーニング代は入居者が払う」と書かれていても、必ずしも有効とは限りません。
有効になる条件は以下の3つ:
- 金額が明確に書かれていること
- 入居者がきちんと内容を理解していること
- 契約書にサイン・押印していること
これが揃っていなければ、その特約は無効になる可能性があります。
👉 まとめると、この5つを知っておくだけで「不必要に高い退去費用」を払わずに済むことが多いです。
4. 退去費用を安くするための具体的な手続きと注意点
退去のときに一番大切なのは、業者や大家さんに流されず、自分の権利を守ることです。ここでは、留学生でもできる具体的なステップを紹介します。
① 火災保険を確認し、入居中に修理しておく
まず、自分が加入している火災保険に「借家人賠償責任」「破損・汚損補償」が入っているかを確認しましょう。
👉 ポイント:
- 子どもの落書きや家具でできた穴なども補償対象になる場合がある
- 退去してからでは使えないので、壊したときにすぐ連絡する
② 賃貸契約書をよく確認する
契約書には「解約の通知は退去の何カ月前に必要か」「誰に連絡すべきか」が書いてあります。
特に外国人留学生の場合、日本語が難しいこともありますが、学校の留学生課や友人に確認してもらうことをおすすめします。
③ 解約通知を送る
退去が決まったら、解約通知(退去届)を大家さんや管理会社に提出します。
このときに注意すべきなのは、不利な内容にサインしないことです。
例:
- 「異議申し立てをしない」などの文言があれば、斜線を引いてから提出する
- 自分で通知書を作る場合は「解約通知と鍵の返却で退去は完了する」と明記しておく
👉 通知書は必ず 配達記録が残る方法 で送りましょう。
④ 室内の写真をたくさん撮る
家具を出したあとに、部屋の隅々まで写真を撮って証拠を残すことが重要です。
なぜなら:
- 悪質な業者が「ここに傷がある」と言っても、証拠があれば反論できる
- 写真は日付が入るように設定しておくとさらに有効
⑤ 退去立ち会いは必須ではない
多くの人が「退去時の立ち会いは義務」と思っていますが、法律上は必須ではありません。
もし立ち会う場合でも:
- その場で書類にサインしない
- 「専門家に確認してから返事します」と伝えればOK
⑥ 鍵を返却する
立ち会いをしない場合は、鍵を郵送で返却することも可能です。
このときも「配達記録」が残る方法を使ってください。
⑦ 請求書が来たら冷静に確認する
退去後に届く「解約精算書」で、以下の点をチェックしましょう。
- 残存価格で計算されているか(新品価格を請求されていないか)
- 修繕範囲が明確か(クロス1面だけなのに全面交換されていないか)
- 入居時の状態を確認できる証拠があるか
👉 不明な点があれば、学校や消費生活センターに相談することもできます。
5. 保証会社から請求が来た場合の注意点
日本の賃貸契約では、多くの場合「保証会社」に加入します。保証会社は、入居者が家賃を払わなかったり、退去費用を支払わなかったりしたときに、代わりに大家さんへ支払い、その後入居者に請求する仕組みです。
一見すると「保証会社=助けてくれる会社」と思うかもしれませんが、実際にはオーナー(大家さん)の味方であり、入居者にとって厳しい対応をすることもあります。
よくあるケース
- 退去立ち会いでサインしていないのに、高額な請求書が届く
- 「保証会社が大家さんに立て替えて払ったから、あなたが払ってください」と言われる
- 実際には根拠のない請求をされる
注意点①:立ち会いでサインしない
退去立ち会いのときに、「解約精算書」や「同意書」にその場でサインすると、あとから不当な金額でも争えなくなります。
👉 必ず持ち帰って確認し、学校や専門機関に相談してから返事をすることが大切です。
注意点②:サインしていないなら支払義務はない
もし保証会社から請求が来ても、サインしていない場合は「金額は確定していない」状態です。
それなのに保証会社が勝手に金額を決めて大家に払ってしまった場合、その請求は無効になる可能性が高いです。
注意点③:強い言葉に負けない
悪質な業者や保証会社は、次のようなことを言うことがあります。
- 「退去立ち会いをしないと退去は完了しません」 ➡ これは嘘です。退去は解約通知と鍵の返却で完了します。
- 「原状回復のガイドラインは法律ではありません」 ➡ 確かにガイドラインは法律ではありませんが、裁判ではほぼガイドラインに沿った判決が出ています。実質的には法的拘束力に近いと考えて大丈夫です。
注意点④:請求が不当だと思ったら
もしサインしていないのに請求が来た場合は、次のように対応してください。
- 請求書に「根拠となる証拠(見積書・写真など)を提示してください」とメールで伝える
- 言葉だけの請求には応じない
- 学校の留学生課、市役所の消費生活センターに相談する
👉 ほとんどの場合、きちんと根拠を求めるだけで不当な請求は引き下がります。
6. まとめ:退去費用を安くするために覚えておくこと
日本で賃貸物件を借りて住むとき、退去費用について正しい知識を持っているかどうかで、支払う金額が大きく変わります。外国人留学生は特に「日本語が苦手だから言われるままに払ってしまう」というケースが多いので注意が必要です。
ここで、重要なポイントを整理します。
✅ ポイント一覧
- 退去費用は「原状回復費用」だけ 普通に生活してできた汚れや劣化(自然損耗)は大家の負担。入居者は故意や過失で壊した部分だけを支払えば良い。
- 新品価格を払う必要はない 壁紙や床は時間とともに価値が下がる(減価償却)。壊した場合も**残っている価値分(残存価格)**だけを払えばOK。
- 修理は「部分」だけでよい 壁紙1枚に穴を開けても、全部屋の壁紙代を請求される必要はありません。最大で「1面まで」です。
- 火災保険を活用できる場合がある 入居中につけた傷や壊れたものは、火災保険の「借家人賠償」でカバーできる可能性があります。ただし退去後は使えないので、傷をつけたらすぐに保険会社に連絡しましょう。
- 特約は無効な場合が多い 「クリーニング代〇〇円」「鍵交換代〇〇円」など特約があっても、金額の明記・同意の証明がないと無効になることが多いです。
- やり取りは必ず記録を残す 解約通知や請求は、必ずメールや書面で行いましょう。立ち会い時はその場でサインせず、必ず確認してから。
- 保証会社からの請求に注意 サインしていないのに高額請求が来る場合があります。根拠を求め、納得できなければ支払わないこと。
📌 留学生へのアドバイス
- 日本語が難しいときは、学校の留学生課や市役所の消費生活センターに相談しましょう。
- 退去立ち会いでは、その場でサインしないこと。
- 困ったら一人で抱え込まず、必ず第三者に相談してください。
👉 まとめると、退去費用は「ほとんどかからない」のが本来のルールです。知識を持って、堂々と正しい権利を主張すれば、トラブルを防ぎ、無駄なお金を払わずに済みます。
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